...しかしその晩葉子はこの少年のような心を持って肉の熟した古藤に罪を犯させて見たくってたまらなくなった...
有島武郎 「或る女」
...男から来る力を嗅ぎわける機能の段々と熟して来るのをお末はどうする事も出来なかつた...
有島武郎 「お末の死」
...晩年変態生活を送った頃は年と共にいよいよ益々老熟して誰とでも如才なく交際し...
内田魯庵 「淡島椿岳」
...なお布哇(ハワイ)攻略の機が如何に熟しているかを...
海野十三 「空襲葬送曲」
...その苺もやがて紅く熟して来る...
薄田泣菫 「艸木虫魚」
...其処に大木の柿の木があつて其の梢に熟した柿が二つか三つ取らずに残してあつた...
高浜虚子 「椿子物語」
...母親は赤く熟して鈴生(すゞなり)になつた酸漿を楽しさうにして見てゐた...
田山録弥 「谷合の碧い空」
...熟した其實を包む髯が絶えず動き戰(そよ)いでゐて...
永井荷風 「蟲の聲」
...これはたしかに相当熟した旧知の間柄であることがわかる...
中里介山 「大菩薩峠」
...平野は悉く黄熟した水田で信濃川が竪に走つて其間に隱見する...
長塚節 「彌彦山」
...モーツァルトの晩年の円熟した境地を知るに充分だが...
野村胡堂 「楽聖物語」
...成熟し切つた十九の肉體は...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...まるく熟した、下町風の笑顔でうけた...
久生十蘭 「我が家の楽園」
...そのうちに右の実がいよいよ軟く黄熟し烈臭を帯びて地に落ち...
牧野富太郎 「植物一日一題」
...熟したる葡萄を絞れ...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...幾度か耳に聞いてこれに習熟しなければならぬ...
柳田國男 「地名の研究」
...然るにこれを見ましたコンドルはイヨイヨ機会が熟したものと考えましたらしく...
夢野久作 「暗黒公使」
...そこの白い窓では腫れ上った首が気惰(けだ)るそうに成熟しているのが常だった...
横光利一 「街の底」
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