...敗亡の機はや熟してぞ見えし...
高山樗牛 「瀧口入道」
...爛熟し、頽廢し、さうしてさびた揚句の果が、こんな閑寂にたどりついたので、私は、かへつて、このせまい裏路に、都大路を感ずるのである...
太宰治 「九月十月十一月」
...私にもやうやく一転化の機縁が熟しました...
種田山頭火 「松山日記」
...垣根に添ひ井戸端に添つてその赤い酸漿の無数に熟してゐるシインが浮んだ...
田山録弥 「谷合の碧い空」
...母親は赤く熟して鈴生(すゞなり)になつた酸漿を楽しさうにして見てゐた...
田山録弥 「谷合の碧い空」
...いくら数学に習熟してもそれで立派なオリジナルな論文が書けるとは限らない...
寺田寅彦 「数学と語学」
...しかし「地図の言葉」に習熟した人にとっては...
寺田寅彦 「地図をながめて」
...寧ろ未発展な唯物論がそのまま爛熟したものに他ならぬ...
戸坂潤 「日本イデオロギー論」
...麥は既に熟し農婦頻に水田を耕すは稻の種まく仕度なるべし...
永井荷風 「荷風戰後日歴 第一」
...誰もまだ熟したお邸名(やしきな)を呼んでいる者はない...
中里介山 「大菩薩峠」
...枇杷の木に黄色な實が熟したとて...
長塚節 「旅行に就いて」
...のみならず時機の熟したところを見計って...
夏目漱石 「明暗」
...支那の戍兵一変ことごとく欧洲式の訓練に熟し...
日野強 「新疆所感」
...もう自分の計略が熟してきたので私は彼と仲間の自費生(プレストン君)の部屋で(これを最後の終決的な会合にしてやろうと堅く思いながら)会った...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「ウィリアム・ウィルスン」
...「六の宮の姫君」が最も熟した果實として...
堀辰雄 「芥川龍之介論」
...夏に白い細花が枝端に聚り咲いて秋に赤い実が熟し赤い汁があって味が酸い...
牧野富太郎 「植物記」
...まるで熟した苹果(りんご)のよう殊(こと)に眼はまん円でまっくろなのでした...
宮沢賢治 「風野又三郎」
...飯が熟し天麩羅が来た...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
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