...いま湯気に煙る砂風呂のうちに惨殺(ざんさつ)されようとしているのであった...
海野十三 「蠅男」
...煙る細雨(さいう)...
江戸川乱歩 「吸血鬼」
...煙るような春雨だった...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...煙る余燼(よじん)の中に...
岡倉覚三 村岡博訳 「茶の本」
...あたりの空気は煙るような雨にみたされ...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...微かに煙るアーク燈の光りのあちらに五重の塔がくすんだ影を陰欝に浮き立たせてゐた...
武田麟太郎 「一の酉」
...さらにその遠方に模糊と煙るが如く白くひろがつてゐるのは...
太宰治 「津軽」
...武蔵野の雑木林が薄緑(うすみどり)に煙る頃...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...湖辺の稲田は煙るように光り...
中勘助 「島守」
...また実際、時々チラと垣間(かいま)見る彼の絵には、大岩に寄りすがった俺の全身を中心として、霧に煙る雪田が、上半に大きく描き出されてあり、そこに俺の姿勢の必然さも、おのずと物語られているかと思うばかりであった...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...濛々(もうもう)と煙る砂塵(さじん)のむこうに青い空間が見え...
原民喜 「夏の花」
...雨に煙る海のうえを...
火野葦平 「花と龍」
...春霞の軒に煙る浅春の宵――凝とたゞひとり机の前に坐つてゐると...
牧野信一 「嘆きの孔雀」
...枯葉を集めに姉と登った裏山の楢林よ山番に追はれて石ころ道を駆け下りるふたりの肩に背負(しょひ)繩はいかにきびしく食ひ入ったかひゞわれたふたりの足に吹く風はいかに血ごりを凍らせたか雲は南にちぎれ熱風は田のくろに流れる山から山に雨乞ひに行く村びとの中に父のかついだ鍬先を凝視(みつ)めながら眼暈ひのする空き腹をこらへて姉と手をつないで越えて行ったあの長い坂路よえぞ柳の煙る書堂の陰に胸を病み...
槇村浩 「間島パルチザンの歌」
......
室生犀星 「星より來れる者」
...間もあらず、「それッ」と、馬前はすでに、飛雪に煙る...
吉川英治 「三国志」
...親友宋憲(そうけん)の仇(あだ)、報いずにおきません」「オオ、魏続(ぎぞく)か、行けっ」魏続は、長桿(ちょうかん)の矛(ほこ)をとって、まっしぐらに駆けだし、敢然顔良へ馬首をぶつけて挑(いど)んだが、黄塵煙るところ、刀影わずか七、八合、顔良の一喝に人馬もろとも、斬り仆された...
吉川英治 「三国志」
...……江(え)の畔(ほとり)には柳や槐(えんじゅ)のみどりが煙るようだし...
吉川英治 「新・水滸伝」
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