...さつきの木の葉が煙るのであつた...
芥川龍之介 「わが散文詩」
...雨に煙る高台寺下の静かな通りを清水(きよみず)へ抜ける道筋も悪くはない...
岩本素白 「雨の宿」
...薄暗く煙るような議場には議員の顔も疎らであった...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...微かに煙るアーク燈の光りのあちらに五重の塔がくすんだ影を陰欝に浮き立たせてゐた...
武田麟太郎 「一の酉」
...明石さへ遠隔の地のやうに思つた昔の京都の殿上人の抱いてゐたやうな感情は私にも遺傳されてゐると思はれて石炭の煙突煙る九州の地は私にはあまりに遠國すぎる...
近松秋江 「伊賀、伊勢路」
...湖辺の稲田は煙るように光り...
中勘助 「島守」
...また実際、時々チラと垣間(かいま)見る彼の絵には、大岩に寄りすがった俺の全身を中心として、霧に煙る雪田が、上半に大きく描き出されてあり、そこに俺の姿勢の必然さも、おのずと物語られているかと思うばかりであった...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...墓の上に煙る柳の梢が眼に触れた...
原民喜 「移動」
...雨に煙るひろびろとした川面を眺めながら...
火野葦平 「花と龍」
...おぼろ月に煙る深夜の街を急いだが...
火野葦平 「花と龍」
...朗かな響き煙るが如くいと妙(たへ)に楽など弾かむ...
牧野信一 「〔編輯余話〕」
...灰白色に煙る海は...
山川方夫 「一人ぼっちのプレゼント」
...東大寺のほとり、煙る雨に、人は少なく、花は今咲いたやうな顏...
吉川英治 「折々の記」
...間もあらず、「それッ」と、馬前はすでに、飛雪に煙る...
吉川英治 「三国志」
...煙る鉄甲(てっこう)の人影しかない...
吉川英治 「新書太閤記」
...……江(え)の畔(ほとり)には柳や槐(えんじゅ)のみどりが煙るようだし...
吉川英治 「新・水滸伝」
...陀雲(だうん)」「お」「お相手に」「ござれ!」二人の踵(かかと)からぱっと土が煙る...
吉川英治 「宮本武蔵」
...すべて若葉に山の煙るころから啼きそめる鳥である...
若山牧水 「樹木とその葉」
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