...神思(しんし)殆(ほとん)ど無何有(むかう)の郷(さと)にあるに似たり...
芥川龍之介 「わが家の古玩」
...かの我を忘れて魂無何有(むかう)の境に逍遙(さまよ)ふといふ心地ではない...
石川啄木 「葬列」
...魂(たましひ)無何有(むかう)の境に逍遙(さまよ)ふといふ心地ではない...
石川啄木 「葬列」
...そのまゝ無何有郷!十月廿一日晴...
種田山頭火 「其中日記」
...湯と酒とが無何有郷に連れていつてくれた...
種田山頭火 「旅日記」
...天外万里無何有(むかう)の郷に漂着したるの想いをなすならん...
徳富蘇峰 「将来の日本」
...吾輩のような碌(ろく)でなしはとうに御暇(おいとま)を頂戴して無何有郷(むかうのきょう)に帰臥(きが)してもいいはずであった...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...遠く無何有の花やかな影であり...
牧野信一 「歌へる日まで」
...安らかに無何有の境に達して大鼾きをあげてゐる者がある――おそらく夢だけで消えてしまふであらう「ソクラテス学校」――そんな題名の小説を想つてゐる私が...
牧野信一 「くもり日つゞき」
...頭からすつぽりと毛布を引き被つて安らかに無何有の境に達して鼾きをあげてゐる筈のGだつた...
牧野信一 「くもり日つゞき」
...愚かな五体は徐ろに無何有の郷に溶けて行つた...
牧野信一 「坂道の孤独参昧」
...眼を据えたまゝ無何有の境に...
牧野信一 「酒盗人」
...相変らずその人は無何有の奈落で安心してゐる模様であつた...
牧野信一 「心象風景」
...無何有の沖へ沖へと雪崩れを打つて消えて行つた...
牧野信一 「ゾイラス」
...私は何うしても捕へることが敵はぬ無何有の悪意地な夢が...
牧野信一 「創作生活にて」
...無何有の風情が突つぴやう子もなく...
牧野信一 「天狗洞食客記」
...遠く近く無何有に煌くアンドロメダは金粉となつて降り灑ぎ僕は何も彼も忘れて...
牧野信一 「ユリイカ・独言」
...泥酔のあまり大活躍をして既に大分息苦し気であつた九郎はウーツと唸つたまゝ静かに無何有の境の人であつた...
牧野信一 「鎧の挿話」
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