...物の影が煎りつく様に小さく濃く...
有島武郎 「かんかん虫」
...寂(しん)として日影が色濃くすべてのものに沁み入っている...
飯田蛇笏 「茸をたずねる」
...たとえば人物の衣裳の色を濃く塗り直したのや...
上村松園 「迷彩」
...そうこうしているうちに風が立ってきて霧は濃くなり...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...開け放たれた扉(ドア)の暗さよりもいっそう濃く黒く見えた...
コナン・ドイル 三上於莵吉訳 「空家の冒険」
...他の病室の患者の慰めなりといへどもひとの枕のほとり心づかざれば未だみしこともなく朝まだき涼しき程の朝顔は藍など濃くてあれなとぞおもふ僅に凌ぎよきは朝まだきのみなり蚤くひの趾などみつゝ水をもて肌拭くほどは涼しかりけり夕に汗を流さんと一杯の水を被りて糊つけし浴衣はうれし蚤くひのこちたき趾も洗はれにけり涼味漸く加はる松の木の疎らこぼるゝ暑き日に草皆硬く秋づきにけり三二十三日...
長塚節 「長塚節歌集 下」
...ロマンチスムの文学にまで色濃く残つてゐた貴族崇拝...
平林初之輔 「文学方法論」
...その後度々(たびたび)人の往復を重ねて話が濃くなり...
福澤諭吉 「福翁自伝」
...だがその匂ひは次第に濃くなつて來る...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...こうした鬱陶しい雰囲気がますます濃くなって来て...
堀辰雄 「楡の家」
...空気は濃くてね...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...固有の文化が濃く残っている所を見出すことが出来なかったからであります...
柳宗悦 「沖縄の思い出」
...芝生の緑が濃くなっているためかハウスの玉子色が一層鮮やかな感じだった...
横光利一 「旅愁」
...また、もうひとりのほうは、眼(まなこ)朗(ほが)らかに、眉濃く、背丈すぐれ、四肢暢(の)びやかな大丈夫で、両名とも、孫策の前につくねんと立ち、「やあ、お初に」「あなたが孫将軍で」と、礼儀もよくわきまえない野人むきだしな挨拶の仕振りである...
吉川英治 「三国志」
...夜霧の流れが濃くなり淡(うす)くなるせいか...
吉川英治 「新書太閤記」
...四日は三日よりも濃く...
吉川英治 「新書太閤記」
...北ノ庄の主脳部に一族間の私情的な盲愛と狎恩(こうおん)が濃くうごいているのを見ると...
吉川英治 「新書太閤記」
...上は濃く、下は淡く、そしてその淡いところだけがかすかに動いてゐる樣に見えた...
若山牧水 「樹木とその葉」
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