...實在の影を愈益濃くして行きたい...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...毎日毎日凍りつくような濃霧の間を...
有島武郎 「或る女」
...またその隅にひともとの大樹を植ゑて、白塗の木の腰掛を根に置かむ――雨降らぬ日は其処(そこ)に出て、かの煙濃く、かをりよき埃及(エジプト)煙草ふかしつつ、四五日おきに送り来る丸善よりの新刊の本の頁を切りかけて、食事の知らせあるまでをうつらうつらと過ごすべく、また、ことごとにつぶらなる眼を見ひらきて聞きほるる村の子供を集めては、いろいろの話聞かすべく……はかなくも、またかなしくも、いつとしもなく若き日にわかれ来りて、月月のくらしのことに疲れゆく、都市居住者のいそがしき心に一度浮びては、はかなくも、またかなしくも、なつかしくして、何時(いつ)までも棄(す)つるに惜しきこの思ひ、そのかずかずの満たされぬ望みと共に、はじめより空(むな)しきことと知りながら、なほ、若き日に人知れず恋せしときの眼付して、妻にも告げず、真白なるラムプの笠を見つめつつ、ひとりひそかに、熱心に、心のうちに思ひつづくる...
石川啄木 「呼子と口笛」
...眉毛(まゆげ)の濃い...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...さももったいらしくほとんど眉ぎわよりはえだした濃い縮れ髪を撫でて...
イワン・ツルゲーネフ Ivan Turgenev 二葉亭四迷訳 「あいびき」
...闇はだんだんと濃くなって来た...
チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳 「二都物語」
...それに濃い紫の刷毛目(はけめ)を引いた花冠は...
寺田寅彦 「病室の花」
...私の上に大きい憂欝(メランコリー)が次第に濃くかぶさって来た...
豊島与志雄 「蠱惑」
...地方の土豪劣紳にも、都市の老舗にも、学府の長老にも、この文化人の後裔は多く、その伝統は濃い...
豊島与志雄 「北京・青島・村落」
...始めて熊(くま)の胆(い)を水に溶き込んだように黒ずんだ濃い汁を...
夏目漱石 「思い出す事など」
...いかに自分らの歴史を濃く彩(いろど)ったかを...
夏目漱石 「門」
...平次の疑(うたがひ)は益々濃くなるばかりです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...特に印象の濃く鮮かなるものが...
柳田国男 「年中行事覚書」
...ひろびろとした西空は雲も空も濃い茜色に燃えあがって...
山川方夫 「愛のごとく」
...闇は濃く道は嶮(けわ)しかった...
山本周五郎 「新潮記」
...濃いお納戸(なんど)の繻子(しゆす)を張り...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...人間の情というものは、もっと、濃くて、深くて、やる瀬ないものじゃないか」「待ってくれ、おばさん、いま灯(あか)りをつけるから」「意地悪」「あっ……おばさん……」骨が、歯の根が、自分の体じゅうが、がくがくと鳴るように、武蔵は思えた...
吉川英治 「宮本武蔵」
...その屋根の上下両端には点々として濃い緑青がある...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
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