...潮鳴りの滿ちし遊廓といふと先づ洲崎あたりだらう...
石川啄木 「女郎買の歌」
...潮鳴る洞門のかなたを...
海野十三 「怪塔王」
...潮鳴の絶え間絶え間に聞えていた...
大阪圭吉 「灯台鬼」
...潮鳴りのような音をたててる火と煙との海でした...
豊島与志雄 「古木」
...風浪険悪の夜は潮鳴りの声が大湊まで来るのは不思議ではありません...
中里介山 「大菩薩峠」
...だが……オーイ オーイ寒冷な風の吹く荒神山の上で呼んでゐる波のやうに元気な叫喚に耳をそばだてよ!可哀想な女房や子供達があんなにも背のびして空高く空高く呼んでゐるではないか!遠い潮鳴りの音を聞いたか!波の怒号するを聞いたか!…………山の上の枯木の下に枯木と一緒に双手を振つてゐる女房子供の目の底には火の粉のやうにつゝ走つて行く赤い帆がいつまでも写つてゐたよ...
林芙美子 「蒼馬を見たり」
...潮鳴の音を聞いたか!茫漠と拡がった海の上の叫喚を聞いたか!煤けたランプの灯を女房達に託して島の職工達は磯の小石を蹴散(けちら)し夕焼けた浜辺へ集まった...
林芙美子 「新版 放浪記」
...潮鳴りの音を聞いたか!茫漠と拡った海の叫喚を聞いたか!煤けたランプの灯を女房達に託して島の職工達は磯の小石を蹴散し夕焼けた浜辺へ集った...
林芙美子 「放浪記(初出)」
...遠い潮鳴りの音を聞いたか!何千と群れた人間の声を聞いたか!こゝは内海の静かな造船港だ貝の蓋を閉じてしまったような因の島の細い町並に油で汚れたズボンや菜っぱ服の旗がひるがえって骨と骨で打ち破る工場の門の崩れる音その音はワアン ワアン島いっぱいに吠えていた...
林芙美子 「放浪記(初出)」
...潮鳴りの音を聞いたか!遠い波の叫喚を聞いたか!旗を振れッ!うんと空高く旗を振れッ元気な若者達がキンキラ光った肌をさらしてカラヽ カラヽ カラヽ破れた赤い帆の帆縄を力いっぱい引きしぼると海水止めの関を喰い破って朱船は風の唸る海へ出た!それ旗を振れッ○○歌を唄えッ朽ちてはいるが元気に風をいっぱい孕んだ朱帆は白いしぶきを蹴って海へ!海の只中へ矢のように走って出た...
林芙美子 「放浪記(初出)」
...ぞうぞうと潮鳴の如く...
原民喜 「長崎の鐘」
...真黒いものが潮鳴りのやうな音をたてて私にうちかかつて来た...
北條民雄 「発病」
...遠い潮鳴りの様に聞いた啜りなきの声もそれをきき分けて自分の立って居るのを何処だと知った時――涙は新に頬を走り下り...
宮本百合子 「悲しめる心」
...沖の潮鳴りがきこえるほか...
吉川英治 「江戸三国志」
...かえって耳につく潮鳴りの間に声を密(ひそ)めて...
吉川英治 「江戸三国志」
...潮鳴の胸『――でも...
吉川英治 「篝火の女」
...耳は潮鳴りで塞(ふさ)がれてしまう...
吉川英治 「随筆 新平家」
...とどろに響く、遠い潮鳴り、磯の香――...
蘭郁二郎 「鱗粉」
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