...鶴は松露を翻して衣裳に滴る...
芥川龍之介 「文芸鑑賞講座」
...これに目も放さないで、手を伸ばして薬瓶を取ると、伸過ぎた身の発奮(はず)みに、蹌踉(よろ)けて、片膝を支(つ)いたなり、口を開けて、垂々(たらたら)と濺(そそ)ぐと――水薬の色が光って、守宮の頭を擡(もた)げて睨(にら)むがごとき目をかけて、滴るや否や、くるくると風車のごとく烈しく廻るのが、見る見る朱を流したように真赤(まっか)になって、ぶるぶると足を縮めるのを、早瀬は瞳を据えて屹(きっ)と視た...
泉鏡花 「婦系図」
...玉盞(ぎょくさん)に滴る...
泉鏡花 「海神別荘」
...公子返す切尖(きっさき)に自から腕を引く、紫の血、玉盞に滴る...
泉鏡花 「海神別荘」
...肌ぬぎて滴る汗をぬぐふは...
大町桂月 「金華山」
...そしてきやしやな指先きに露の滴るやうな花束をとり上げて...
薄田泣菫 「茶話」
...109 樹より滴る野生の蜜=舊約全書サミユル前書十四章二十六節參照...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...屋根にたまって滴る露の雫だった...
豊島与志雄 「初秋海浜記」
...血の滴るような羊肉を盛った皿が際限もなく現われてくる料理場口の上方には...
豊島与志雄 「秦の憂愁」
...どろどろした生血(なまち)の雪に滴る有様...
永井荷風 「狐」
...壕の天井から滴る水が気味悪く時を刻む...
永井隆 「長崎の鐘」
...「藤尾が一人出ると昨夕(ゆうべ)のような女を五人殺します」鮮(あざや)かな眸に滴るものはぱっと散った...
夏目漱石 「虞美人草」
...お千代ひとりが着たかのやうに――よく思へば、八百屋の嫁御風情が、ふだん着にぞべらとしてゐたかどうかさへわからないのだが、お千代の、色の白い、ぽつてりとした、滴るやうな、女盛りの體に、紅の襟うらの透いた紺かたびらは、ほのぐらい店の隅の青物と、行燈の光りとに和して、なまめかしい匂ひがただよつてくる...
長谷川時雨 「夏の女」
...空中に滴る雨の音や...
林芙美子 「雨」
...その声に滴るばかりの愛嬌を含ませながら...
久生十蘭 「魔都」
...今に其壁より石灰を含んだ乳樣の水が滴るを婦女詣で拜む...
南方熊楠 「人柱の話」
...前に差し置いた大鉢には血の滴る大鯛が一匹反りかえって...
夢野久作 「狂歌師赤猪口兵衛」
...まるで滴るような下劣な願いにちがいない...
横光利一 「上海」
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