...これより行人稀となりて両岸の火も消え漕ぎ去る船の波も平らに月の光り水にも空にも満ちて川風に音ある時となりて清涼の気味滴る計りなり...
饗庭篁村 「良夜」
...間もなく聞えるのは唯血の滴る音ばかりになつた...
アナトール・フランス Anatole France 芥川龍之介訳 「バルタザアル」
...青銅の擬寶珠(ぎばうしゆ)の古色滴る許りなる上(かみ)中(なか)の二橋...
石川啄木 「葬列」
...これに目も放さないで、手を伸ばして薬瓶を取ると、伸過ぎた身の発奮(はず)みに、蹌踉(よろ)けて、片膝を支(つ)いたなり、口を開けて、垂々(たらたら)と濺(そそ)ぐと――水薬の色が光って、守宮の頭を擡(もた)げて睨(にら)むがごとき目をかけて、滴るや否や、くるくると風車のごとく烈しく廻るのが、見る見る朱を流したように真赤(まっか)になって、ぶるぶると足を縮めるのを、早瀬は瞳を据えて屹(きっ)と視た...
泉鏡花 「婦系図」
...矛の末より滴る塩積りて淤能碁呂(オノコロ)島となりしとの記事あり...
高木敏雄 「比較神話学」
... 175やがて滴る鮮血をすゝり臟腑を喰ひ盡す...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...セルギウスは血の滴る指の切口を法衣の裾に巻いて...
レオ・トルストイ Lev Nikolaevich Tolstoi 森林太郎訳 「パアテル・セルギウス」
...絲雨殘梅に滴る...
永井荷風 「荷風戰後日歴 第一」
...桜花落尽して満山の新緑滴るが如し...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...深夜細雨の落葉に滴るを聞く...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...此の女の持って居る滴るような媚態や...
野村胡堂 「新奇談クラブ」
...痙攣的に顫える手で額部に滴る冷たい汗を拭っている...
牧逸馬 「双面獣」
...」かう云ひさして爺いさんは水の滴る自分の着物を指さした...
カミイユ・ルモンニエエ Camille Lemonnier 森林太郎訳 「聖ニコラウスの夜」
...まるで滴るような下劣な願いにちがいない...
横光利一 「上海」
...滴る血の重みに倒れるかのようにばったりと地に倒れた...
横光利一 「日輪」
...それもわが身の罪の流れ滴るのを眼にするように感じ...
横光利一 「旅愁」
...實に滴る樣な鮮かな紅ゐの色をしてゐた...
若山牧水 「樹木とその葉」
...滴る樣な濃紫の指頭大の粒々しい實の上にさら/\と鹽を振つて...
若山牧水 「樹木とその葉」
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