...その滲憺たる幻影の中にも自分はまだ最後の努力をしてゐるのを心丈夫に感じつつ...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...二葉亭にいわしむれば生活の血の滲(にじ)まない製作は文学を冒涜(ぼうとく)する罪悪であったのだ...
内田魯庵 「二葉亭四迷の一生」
...慌(あわただ)しい中にも妙に一抹の侘(わび)しさを私の胸に滲(し)み入らせていたが...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...花飾りのついた鏡の表面に私が見たのは寡黙な滲みに過ぎなかった...
O. H. ダンバー O. H. Dunbar The Creative CAT 訳 「長い部屋」
...そうして地の細孔から滲出(しんしゅつ)する乳汁(にゅうじゅう)によって養われていた...
寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
...そして、その脣に、微かな余裕の笑をみせ、その呼吸は落ちつき、その構えは十分に、その足は正確に――、半兵衛は(天晴れだ)と、感じると共に、槍をもって立合えないのが、腸(はらわた)の底から、悲憤して、滲み上ってきた...
直木三十五 「寛永武道鑑」
...微かに血が滲み出していた...
直木三十五 「南国太平記」
...できないのをお銀様は、自棄(やけ)に吸い上げ吸い上げしたものですから、滲み出る血を、すっかり口中に吸い取りました...
中里介山 「大菩薩峠」
...そこから血が滲(にじ)み出ているのを...
中里介山 「大菩薩峠」
...かれが時を「持續」において成立つとしたことも又時における内容の融合滲透を説いたことも...
波多野精一 「時と永遠」
...まんまと奴等の体内に滲み込んでゐるのだ...
牧野信一 「冬日抄」
...それも白粉の下にぽつと滲んでゐるので殆ど目立なかつた...
牧野信一 「妄想患者」
...音楽の感覚というものをちっとも滲透させていないのです...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...じっとしていても汗の滲(にじ)むような夏の午(ひる)さがりにも...
山本周五郎 「日本婦道記」
...骨の髄まで滲み透るほど感銘させられた...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...生紙(きがみ)へ墨を落したように町も灯も山も滲(にじ)んでいた...
吉川英治 「親鸞」
...苦(にが)い気持が滲(にじ)みでるのをどうしようもなく...
吉川英治 「宮本武蔵」
...醉つた心に涙の滲むほど親しいものに眺められた...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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