...』其日は一日、可成(なるべく)くすんだ顏を人に見せまいと思つて、頻りに心にもない戲談を云つたが、其(そんな)事をすればする程、頭腦(あたま)が暗くなつて來て、筆が溢る、無暗矢鱈に二號活字を使ふ...
石川啄木 「菊池君」
...溢るゝ許りの夏の光を漂はせて...
石川啄木 「鳥影」
...溢るる涙を袖にけして...
薄田泣菫 「泣菫詩抄」
...何かも知らぬ睦魂(むつだま)のよろこび胸に溢るるに...
薄田泣菫 「泣菫詩抄」
...老の兩眼に溢るゝばかりの涙を浮べ...
高山樗牛 「瀧口入道」
...そうして朝の光の溢るる露の草原を蹴散らして凱歌をあげながら家路に帰るのである...
寺田寅彦 「夏」
...第二十一 スカマンダロスの河流、屍體に因て溢る...
土井晩翠 「「イーリアス」例言」
...のどけさつきぬ笑聲は歡喜溢るゝ宮の中...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...勇氣溢るゝわが胸を刺せ...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...帳中眠かすかにて短檠光薄ければこゝにも見ゆる秋の色銀甲堅くよろへども見よや侍衞の面かげに無限の愁溢るゝを...
土井晩翠 「天地有情」
...何か溢るる如きものがあった...
中井正一 「地方文化運動報告」
...自分はいか程溢るゝ感激...
永井荷風 「黄昏の地中海」
...いつでも帰っておいでなさい」と真情溢るるがごとき挨拶をした...
久生十蘭 「我が家の楽園」
...溢るる浴泉をあびて...
平出修 「計画」
...彼女は溢るゝ計りの熱心と真実との籠つた彼の説話の二言三言を聞くとはなしに聞き入つた...
平出修 「夜烏」
...奇体な飄逸味と溢るゝばかりの熱情を持つた化物のやうな弁士ではありませんか...
牧野信一 「「風博士」」
...溢るるばかりゆたかな...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トリスタン」
...紳士は溢るるばかりの愛嬌を見せて徳市に云った...
夢野久作 「黒白ストーリー」
便利!手書き漢字入力検索