...男がぐっしょり湿った兵隊の古長靴(ふるながぐつ)を脱ぐのを待って...
有島武郎 「生まれいずる悩み」
...少しく湿った土を踏んでゆく心持はよい...
大下藤次郎 「白峰の麓」
...波頭(なみがしら)が砂浜をはい上がって引いたすぐあとの湿った細砂の表面を足で踏むと...
寺田寅彦 「夏の小半日」
...湿った粘土と混じて焼けば硫酸銅と酸化銅が出来る...
寺田寅彦 「話の種」
...囲炉裡に燃ゆる火が昼間の光と湿った空気とを映して淡々しい...
豊島与志雄 「湖水と彼等」
...湿った道の生垣(いけがき)つづき...
永井荷風 「曇天」
...凍結線といっても湿った土は零度で判然と凍るものではなく...
中谷宇吉郎 「凍上の話」
...海風で湿った岸壁が舷窓からあふれだすあかりを受けてところどころで光っていた...
久生十蘭 「復活祭」
...先にその事情を知らせてくれたまえ」真名古は湿った調子で仔細に調査の次第を述べる...
久生十蘭 「魔都」
...夢ならざる湿った皮膚と動悸とが常に残り...
A. ブラックウッド A. Blackwood The Creative CAT 訳 「盗聴者」
...しかしこの湿った黒い腐敗物は全く病気の温床だ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「死の土壌」
...彼女は湿った土に坐り込み...
本庄陸男 「とも喰い」
...甘酸(あまず)っぱい湿った臭いを発散させて暗く押し黙って並んでいる...
牧逸馬 「女肉を料理する男」
...中将は湿った気持ちになり...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...苦艱を緩める力のある、湿ったお前達は、あの虚妄のの戯を、熱くない稲妻に変ぜさせてくれ...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...絹の敷布は寝台の上から掻き落されて開いた緞帳の口から湿った枕と一緒にはみ出ていた...
横光利一 「ナポレオンと田虫」
...二人は湿った部分を除けながらまた一と苦心をつづけていったが...
横光利一 「旅愁」
...暫く湿った斑点を彼は貴く見ていたが...
横光利一 「旅愁」
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