...春三郎は口許に微笑を湛へて照ちやんを見上げるばかりであつた...
高濱虚子 「續俳諧師」
...しかも満面に懐かしそうな微笑を湛(たた)えて...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...窓からさし込んで天井の高い白壁に湛えられてる...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...茫っとした薄ら明りが玄関に一杯湛えています...
豊島与志雄 「影」
...何処から射(さ)すともない明るみが一杯に湛えていた...
豊島与志雄 「生あらば」
...深く水を湛えた或る巌蔭で...
中島敦 「環礁」
...薄暗い空気を湛(たた)えるごとくに思われた...
夏目漱石 「満韓ところどころ」
...湛然は陸奧の北端まで行つて居る...
原勝郎 「鎌倉時代の布教と當時の交通」
...底抜けの静謐を湛へてゐる青空を視たとき...
原民喜 「火の踵」
...うち湛へた湖から白鳥の飛翔したやうな...
芝不器男 「不器男句集」
...異様なかがやきを眼に湛(たた)えたまま...
吉川英治 「新書太閤記」
...御主人はもうお目ざめですか」四郎次郎の家族たちはみな家の外へ出て、本能寺のほうに立ち昇る黒煙を眺めていたので、まずこう問うと、「おや、宗湛さまですか...
吉川英治 「新書太閤記」
...「上人(しょうにん)もお年を老(と)られた――この禅房の建物も」湛空は...
吉川英治 「親鸞」
...すると湛空が、「オオよい折に」と、早速、「善信御房、あなたならば、はっきりしたお考えをお持ちにちがいないからうかがうが――」と、質問し出すのである...
吉川英治 「親鸞」
...江の浦の岸邊でも底の見えぬ青みを湛へて居る...
若山牧水 「樹木とその葉」
...ある者はその心に無限なるものの光を湛(たた)えた...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
...能面が一般に一味の気味悪さを湛(たた)えているのはかかる否定性にもとづくのである...
和辻哲郎 「能面の様式」
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