...ここでこんな気分に浸ることはめつたになかつた...
芥川多加志 「四人」
...それからというもの葉子は忘我渾沌(ぼうがこんとん)の歓喜に浸るためには...
有島武郎 「或る女」
...夫人を迎えて家庭の団欒(だんらん)の悦びに浸るようになってからは詩人の夢から覚(さ)めて頗(すこぶ)る平穏堅実となったとのみ聞いていた...
内田魯庵 「硯友社の勃興と道程」
...ただ現在のうらぶれた無気力な気分に浸るばかりだった...
豊島与志雄 「立枯れ」
...利根川や漲る水に打ち浸る楊吹きしなふ秋の風かもおぼほしく水泡吹きよする秋風に岸の眞菰に浪越えむとす同廿三日...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...自分自身の魂に浸ることいかに誠実にして深いかにあるのだ...
中原中也 「詩論」
...汚辱に浸る月の心になんの慰愛もあたへはしない...
中原中也 「山羊の歌」
...コップの中に水を一杯入れてその上に浸るように濾紙(ろし)を載せ...
中谷宇吉郎 「「霜柱の研究」について」
...丑の日の丑の刻に温泉に浸ると万病に特効があるといふしきたりから浴客に時刻を知らせたのである...
野口雨情 「大利根八十里を溯る」
...青く淀んでいる、ぬらりとした湯に、首まで浸ると、金五郎は、なにか、ぐったりとなって、不思議な疲れをおぼえた...
火野葦平 「花と龍」
...湯槽(ゆぶね)に浸ると...
火野葦平 「花と龍」
...裸になって湯槽に浸るセットが六七つ...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...この世にも奇怪な光景から魔呵なる恍惚の浴霊に浸ると...
牧野信一 「酒盗人」
...そうして一種の宗教的気分に浸るということが慰めであるように感じられた...
三木清 「読書遍歴」
...(b)冬再び帰り来てオリオンそこに浸るとき...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...思いにつれて、ある春の日、箱根の浴槽で自分の横に浸った芸者らしい婦人の堂堂とした白い肌が、水面へ浸る毎に、総立ち上った長い初毛のそれぞれの先端からぶつぶつと細かい無数の水泡を浮きのぼらせていた壮観さが、瞬間浴槽の中の真紀子の姿となり代って浮かんで来るのだった...
横光利一 「旅愁」
...一所の感興に浸る時が乏しかつた為めに...
與謝野寛・與謝野晶子 「満蒙遊記」
...美に浸る心持ちを善にいそしむ心持ちよりも重んずることを意味する...
和辻哲郎 「享楽人」
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