...それからというもの葉子は忘我渾沌(ぼうがこんとん)の歓喜に浸るためには...
有島武郎 「或る女」
...船腹についたカキは別府湾の潮に浸ると忽(たちま)ち腐って落ちて仕舞(しま)うのである...
高浜虚子 「別府温泉」
...―――幸子はその感想に浸ることがこの上もなく楽しいのであったが...
谷崎潤一郎 「細雪」
...先づ湯田の温泉に浸る...
種田山頭火 「其中日記」
...湯田へ出かけて熱い温泉に浸る...
種田山頭火 「其中日記」
...そこでは一層かれはさうした心持に浸ることが出来た...
田山録弥 「浴室」
...その緩急混合の芳香の中に浸るのだった...
豊島与志雄 「秦の出発」
...彼女が居ない淋しさに浸ることも出来なければ...
豊島与志雄 「反抗」
...汚辱に浸る月の心になんの慰愛もあたへはしない...
中原中也 「山羊の歌」
...快く浸る肌を、何かこそぐる物があれば、それは氷に閉じられていた草木が、解き放たれて、泳ぎ出したのにちがいない...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...ダンスホールや酒場などの空気に浸ることを覚えた...
原民喜 「滑走」
...湯槽(ゆぶね)に浸ると...
火野葦平 「花と龍」
...又同じ時の歌に 梅の実の黄に落ち散りて沙半ば乾ける庭の夕明りかな 山の湯が草の葉色を湛へしに浸る朝(あした)も物をこそ思へ などがある...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...どんなにか人類は厚い幸福に浸るであろう...
柳宗悦 「民藝四十年」
...彼はかん子の來てゐることを意識してゐるだけでも今迄のやうに弛やかな氣持ちで湯に浸ることが出來なくなつた...
横光利一 「悲しみの代價」
...思いにつれて、ある春の日、箱根の浴槽で自分の横に浸った芸者らしい婦人の堂堂とした白い肌が、水面へ浸る毎に、総立ち上った長い初毛のそれぞれの先端からぶつぶつと細かい無数の水泡を浮きのぼらせていた壮観さが、瞬間浴槽の中の真紀子の姿となり代って浮かんで来るのだった...
横光利一 「旅愁」
...人はとりどりにその板にしがみ附きながら隊長の立つ方向に面して息を殺して浸るのである...
若山牧水 「みなかみ紀行」
...美しい偶像と音楽とのもたらす法悦に浸ることは...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
便利!手書き漢字入力検索
この漢字は何でしょう??