...そしておそらくは(自分では見えないけれども)これほどの忙しさの間にも自分を粉飾するのを忘れずにいる葉子自身がいかにも浮薄なたよりないものだった...
有島武郎 「或る女」
...徒(いたづ)らに一時の旗鼓(きこ)の勝利と浮薄なる外人の称讃に幻惑するが如き挙に出でしめば...
石川啄木 「渋民村より」
...其時代の娘たちのあがきを浮薄な氣持を少しも加へないでガツチリと書き現はされたよい作だと思ふ...
今井邦子 「水野仙子さんの思ひ出」
...浮薄な言動は、つつしみなさい...
太宰治 「新ハムレット」
...浮薄な都人(みやこびと)からはたちまち田舎ッペイとして...
橘外男 「仁王門」
...思いあがった浮薄な文字を羅列するか...
豊島与志雄 「情意の干満」
...弱い者が自(みずか)らその弱い事を忘れ軽々しく浮薄なる時代の声に誘惑されようとするのは...
永井荷風 「日和下駄」
...新奇なもの浮薄なものを峻拒(しゅんきょ)して...
野村胡堂 「楽聖物語」
...今は有名な美容術師で、派手な浮薄な、如何(いかが)わしい限りの生活をして居りますが、元は外交官の夫人だったという噂のある村岡柳子(りゅうこ)、商売物の化粧品を、フンダンに使った厚化粧の埃及(エジプト)眉毛、濃い紅を含んだ唇も、なんとなく年齢(とし)を超越して仇(あだ)めきます...
野村胡堂 「青い眼鏡」
...「足が大地を離れている」「腰がふらついている」「浮薄な陶酔に溺(おぼ)れている」等...
萩原朔太郎 「詩の原理」
...「貴君(あなた)は私をそんな浮薄なものだと思ッてお出でなさるの」ト云ッてくれるかも知れぬ...
二葉亭四迷 「浮雲」
...薫がしいて近づいて来た時には妹を自分の代わりに与えよう、目的としたものに劣っていたところで、そうして縁の結ばれた以上は軽率に捨ててしまうような性格の薫ではないのだから、ましてほのかにでも顔を見れば多大な慰めを感じるに価する妹ではないか、こんなことは話として持ち出しても、眼前に目的を変えて見せる人があるはずはない、この間から弁に言わせてもいるが、初めの志に違うなどと言って聞き入れるふうがないというのは、自分に対して今まで言っていたことが、こんなに根底の浅いものであったかと思わせることを避けているにすぎまい、とこう考えを決める姫君であったが、少しそのことを中の君に知らせておかないでその計らいをするのは仏法の罪を作ることではあるまいかと、先夜の闖入者に苦しんだ経験から妹の女王がかわいそうになり、ほかの話をした続きに、「お亡(な)くなりになったお父様のお言葉は、たとえこうした心細い生活でも、それを続けて行かねばならぬとして、浮薄な恋愛を、感情の動くままにして、世間の物笑いになるなということでしたね...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...今まで軽蔑(けいべつ)をしていた浮薄な人たちにとって...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...我々の思想の中に古代の最も浮薄な気分を注ぎこんだ...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...中には浮薄な人間もあったろう...
山本周五郎 「長屋天一坊」
...以後浮薄な慢心を慎(つつし)んで家来どもにも真の武芸を出精させいと! よいか!」ワッと逃ぐるを追って呶鳴りつけた...
吉川英治 「剣難女難」
...性慾の衝動に動く浮薄な男を描き...
和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
...そうでないものは単に浮薄なる心の徴候に過ぎぬ...
和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
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