...あの喇叭(らっぱ)に似ているのもやはり法螺貝(ほらがい)と云うのであろうか? この砂の中に隠れているのは浅蜊(あさり)と云う貝に違いない...
芥川龍之介 「少年」
...が、あの辺は家々の庭背戸が相応に広く、板塀、裏木戸、生垣の幾曲り、で、根岸の里の雪の卯(う)の花、水の紫陽花(あじさい)の風情はないが、木瓜(ぼけ)、山吹の覗かれる窪地の屋敷町で、そのどこからも、駿河台(するがだい)の濃い樹立の下に、和仏英女学校というのの壁の色が、凩(こがらし)の吹く日も、暖かそうに霞んで見えて、裏表、露地の処々(ところどころ)から、三崎座の女芝居の景気幟(のぼり)が、茜(あかね)、浅黄(あさぎ)、青く、白く、また曇ったり、濁ったり、その日の天気、時々の空の色に、ひらひらと風次第に靡(なび)くが見えたし、場処によると――あすこがもう水道橋――三崎稲荷(いなり)の朱の鳥居が、物干場の草原だの、浅蜊(あさり)、蜆(しじみ)の貝殻の棄てたも交る、空地を通して、その名の岬に立ったように、土手の松に並んで見通された...
泉鏡花 「薄紅梅」
...江戸川及び中川の河口附近の浅蜊...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...魚や肉などは余りに買わないで多くは浅蜊(あさり)や蛤(はまぐり)または鰯売り位を呼込んで副菜にし...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...春夜浅蜊のやうなもの...
萩原朔太郎 「月に吠える」
...浅蜊の煮汁をやればいいのとさんざんに凝りぬく...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...朝食、スパゲティーと、豚カツ、浅蜊のみそ汁、飯一杯半食ふ...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...深川茶漬といって浅蜊のおじやみたいなものをこしらえ...
正岡容 「小説 圓朝」
...セッセと浅蜊の殻を剥いていた...
正岡容 「寄席」
...潟からは浅蜊(あさり)や蜆(しじみ)や蛤(はまぐり)がよく獲れて...
正宗白鳥 「入江のほとり」
...浅蜊(あさり)汁とか鰯(いわし)の団子汁とか...
山本周五郎 「風流太平記」
...浅蜊(あさり)貝の腐ったゴト口開けとる奴(と)ばドウするケエ』『まあまあ...
夢野久作 「近世快人伝」
...家は浅蜊(あさり)の貝殻を踏みつけた高橋際(たかばしぎわ)の路地にあった...
吉川英治 「醤油仏」
...例の浅蜊(あさり)をザクザク踏みしめる路地の奥を訪れた...
吉川英治 「醤油仏」
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