...塀の前を、用水が流るるために、波打つばかり、窓掛に合歓(ねむ)の花の影こそ揺れ揺れ通え、差覗く人目は届かぬから、縁の雨戸は開けたままで、心置なく飲めるのを、あれだけの酒好(ずき)が、なぜか、夫人の居ない時は、硝子杯(コップ)へ注(つ)ける口も苦そうに、差置いて、どうやら鬱(ふさ)ぐらしい...
泉鏡花 「婦系図」
...お蔦は恥じてか、見て欲(ほし)かったか、肩を捻(ひね)って、髷(まげ)を真向きに、毛筋も透通るような頸(うなじ)を向けて、なだらかに掛けた小掻巻(こがいまき)の膝の辺(あたり)に、一波打つと、力を入れたらしく寝返りした...
泉鏡花 「婦系図」
...その海の水は根を波打つてゐるのだ...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...波打つ天井ががっしりした楢の梁に支えられ...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「サセックスの吸血鬼」
...波打つように動き...
直木三十五 「南国太平記」
...房州那古の濱より鷹の島に遊ぶ鮑とる鷹の島曲をゆきしかば手折りて來たる濱木綿の花潮滿つと波打つ磯の蕁麻(いらくさ)の茂きがなかにさける濱木綿はまゆふは花のおもしろ夕されば折りもて來れど開く其花卅一日...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...雪は風にクラストして砂丘状に波打つところ...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...破砕された岩砂の緩やかに波打つ峯頭へ身を投げ出す...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...北海などの峰々が緩く波打つ間の盆地にあって...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...波打つ老女の背中を...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...なにかやはりただならぬ気鬱が波打つてゐる...
原民喜 「画集」
...波打つ花の中を自転車に乗った娘が昂然として行く...
横光利一 「欧洲紀行」
...天幕の波打つ峯と峯との間から突如として飛び上るフットボール...
横光利一 「上海」
...少し青ざめた顳(こめかみ)のあたりに薄く浮き上っている真紀子の静脈の波打つのを矢代はちらりと眺め...
横光利一 「旅愁」
...家々の壁に沿つて風に波打つてゐた花を刺した白幕...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...いつも苦しい魅力をもつて波打つてゐた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...小さい声が波打つばかりで...
吉川英治 「新書太閤記」
...蔓に飾られた波打つ蘇鉄の森の中を流れ下ってきたことが示されていた...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
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