...油蝉(あぶらぜみ)の声は御殿の池をめぐる鬱蒼(うっそう)たる木立ちのほうからしみ入るように聞こえていた...
有島武郎 「或る女」
...錦鱗(きんりん)湖萍(うきぐさ)の温泉(ゆ)の湧く岸に倚(よ)り茂る自動車を下(おり)る夏草(なつぐさ)に油蝉(あぶらぜみ)なく山路(やまじ)かな旱(ひでり)大夕立来(く)るらし由布(ゆふ)の掻き曇り別府の地下は泉脈が縦横にあって...
高浜虚子 「別府温泉」
...この百日紅(さるすべり)に油蝉(あぶらぜみ)がいっぱいたかって...
太宰治 「彼は昔の彼ならず」
...油蝉の声が裏の崖の方から炙りつくやうに聞えてゐた...
田中貢太郎 「黒い蝶」
...油蝉熊蝉が鳴きだした...
種田山頭火 「其中日記」
...油蝉(あぶらぜみ)の声のような断続する音と...
寺田寅彦 「柿の種」
...昼間は油蝉(あぶらぜみ)の音の煎(い)りつく様に暑い...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...まるで松の樹に油蝉が取りついたようで問題にならないが...
中里介山 「大菩薩峠」
...熬(い)りつける樣(やう)な油蝉(あぶらぜみ)の聲(こゑ)が彼等(かれら)の心(こゝろ)を撼(ゆる)がしては鼻(はな)のつまつたやうなみん/\蝉(ぜみ)の聲(こゑ)が其(そ)の心(こゝろ)を溶(とろ)かさうとする...
長塚節 「土」
...蜘蛛の囲にかかる油蝉(あぶらぜみ)はかかっても暴れて行かぬ...
夏目漱石 「虞美人草」
...油蝉の声がつくつく法師の声に変るごとくに...
夏目漱石 「こころ」
...ツクツク法師も戸まどいしたようで、また、森では、油蝉が鳴いた...
火野葦平 「花と龍」
......
前田普羅 「普羅句集」
...向方が油蝉なら此方はクツワ虫の勢ひで攻め寄せてやらう...
牧野信一 「円卓子での話」
...書院の方の庭にある柿(かき)の樹で大きな油蝉(あぶらぜみ)が暑苦(あつくる)しく啼き出した...
與謝野寛 「蓬生」
...油蝉(あぶらぜみ)の死骸に蟻がたかっているのも暑い...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...気の狂ったような油蝉(あぶらぜみ)が一匹...
吉川英治 「宮本武蔵」
...ジーッと圧迫されるような油蝉(あぶらぜみ)の声が...
蘭郁二郎 「鱗粉」
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