...自分は乞食のやうな風體をしてゐる人を見て一種の沈痛な滿足を感じた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第三」
...沈痛なる事晝寢の夢の中で去年死んだ黒猫の幽靈の出た樣な聲あつて...
石川啄木 「雲は天才である」
...朝の食卓は大杉夫婦を知る家族の沈痛な沈黙の中に終った...
内田魯庵 「最後の大杉」
...「これは厄介なことになりましたのネ」と女史は現場を検分しながら沈痛な面持をして云った...
海野十三 「三人の双生児」
...ここに療養所長の証明書があります」尾形警部は沈痛な面持で...
海野十三 「赤耀館事件の真相」
...正客の歌人の右翼にすわっていた芥川(あくたがわ)君が沈痛な顔をして立ち上がって...
寺田寅彦 「備忘録」
...ちょうど魔法の鏡の中に自分の未來の姿を沈痛な心持で見まもっている何びとかを...
アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフ Annette von Droste=Hulshoff 番匠谷英一訳 「ユダヤ人のブナの木」
...松崎は世間に対すると共にまた自分の生涯に対しても同じように半(なかば)は慷慨(こうがい)し半は冷嘲(れいちょう)したいような沈痛な心持になる...
永井荷風 「つゆのあとさき」
...必ず先生の沈痛なる真情のこゑと肯ける...
中村憲吉 「頼杏坪先生」
...しばらく沈痛な夕ばえの空を残す...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...時折洩らす沈痛な呻き声によっても...
久生十蘭 「魔都」
...新之助は、沈痛な面持で、「さっき、お前に、こみ入った話があるというたのは、お京のことなんじゃが、……今日あたり、お前の家へ報告に行こうかと、考えとったんじゃ...
火野葦平 「花と龍」
...詩人の心血を注いで書いた「悲歌」の沈痛なアクセントのほのかな餘韻のやうなものは感ぜられるのである...
堀辰雄 「ノオト」
...金吾には沈痛な理性が研(と)げてくるばかりであり...
吉川英治 「江戸三国志」
...尊氏のすがたにはなんのとげとげしさも沈痛な気色もなかった...
吉川英治 「私本太平記」
...沈痛な平伏をつづけている二人へ...
吉川英治 「新書太閤記」
...そして読みゆくうちに顔いろに沈痛な影がうごいてきた...
吉川英治 「親鸞」
...ある時は何か沈痛な調子で父から...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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