...戀愛は始めて身に沁みる經驗となる...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...紅熟した肉の冷たさが歯ぐきに沁み徹る御所柿...
薄田泣菫 「独楽園」
...身に沁み込んだ藝者遊びの味は...
谷崎潤一郎 「幇間」
...歯ぐきから膓(はらわた)の底へ沁(し)み徹(とお)る冷(つ)めたさを喜びつつ甘い粘(ねば)っこいの実を貪(むさぼ)るように二つまで食べた...
谷崎潤一郎 「吉野葛」
...そして寝ながら立ててゐる片足のズボンの膝のあたりにもどす黒い斑点の沁みてゐるのを見てとつた...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...沁(し)み通っていて...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...未練がましい思ひ出ほど毒なものはない」沁々と言つて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「それぢやア、二十五圓貰ひます」「えゝ、どうぞ取つて下さい」唇がつけられないほど熱い酒だつたが、冷い舌に沁みて、しびれるやうに甘美(うま)かつた...
林芙美子 「雨」
...海邊の風が心に沁みたのか...
林芙美子 「大島行」
...そして青田の上をすいすいと蜻蛉(とんぼ)の群が飛んでゆくのが目に沁(し)みた...
原民喜 「夏の花」
...自殺は罪だという教えが沁みこんでいるので」「それはいいです...
久生十蘭 「ノア」
...砂日傘(サンド・パラソル)の下でポータブルの鍵を巻いてゐたひよろ長い男が厭に沁々とした口調で...
牧野信一 「まぼろし」
...ねつとりと沁みでたやうな美しさを彼女から感じ出した...
室生犀星 「蒼白き巣窟」
...打水をするとその切れ目に水が沁み込んで肌が乾いてもそこだけ湿つたすぢを残してゐる...
室生犀星 「故郷を辞す」
...いくらかさういふ表情のなかから沁み出たやうな子供らしい觀念をいまだに持つてゐるのである...
室生犀星 「星より來れる者」
...それが冷たい幕のように甲谷の身体に沁(し)み透った...
横光利一 「上海」
...ふと栖方のある覚悟が背に沁(し)み伝わりさみしさを感じて来たが...
横光利一 「微笑」
...眼にも沁(し)む...
吉川英治 「三国志」
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