...次に堺氏が「ルソーとレーニン」および「労働者と知識階級」と題した二節の論旨を読むと、正直のところ、僕は自分の申し分が奇矯(ききょう)に過ぎていたのを感ずる...
有島武郎 「片信」
...それなら妙子はこの二人の云い分をどう判断しているかと云うと、正直のところ、うちは板倉のほんとうの気持をうすうす感じていないではない、板倉も利根(りこう)だから、そんなことを色にも出しはしないが、あれ迄の冒険をしてうちを助けてくれたのは、多分単純な旧主人への恩返しや忠義ばかりではないであろう、彼自身それを意識しているかどうかは別として、啓坊に忠義を尽すよりはうちに忠義を尽しているのかも知れない、が、仮にそうであったとしても何も差支えない訳である、彼が埒(らち)を越えない限り此方も知って知らん顔していたらよい、あの通り中々重宝な男で小まめに用足しをしてくれるから、精々利用したらよいし、向うも利用されることを光栄に思っているのだから、そう思わせて置いたらよい、―――と云うのであって、彼女はその腹で彼と附合っていたのであるが、啓ちゃんが気が小さくて、嫉妬(やきもち)を焼くので、詰まらない誤解を受けるのも厭だから、絶交したのではないけれどもなるべく往き来しないように話合いを附けたのである...
谷崎潤一郎 「細雪」
...お三時に、と云って冷麦の丼(どんぶり)が運び込まれたあとで、幸子だけが打ち合せのために母屋の方の一と間へ呼ばれて、未亡人と対坐(たいざ)したが、正直のところ、彼女は五分か十分も話を聞いているうちに、早くも今日の招待に応じたことを後悔する念が湧(わ)いた...
谷崎潤一郎 「細雪」
...正直のところ歌のよしあしはどうでもよいのだが...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...「正直のところ、あなたに無駄足を踏ませてしまったかもしれません...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「サセックスの吸血鬼」
...こんなことを申し上げると、いかにも馬鹿野郎のようでございますけれど、正直のところ、私共なんぞはそれでございますよ、行く末、英雄豪傑になれるというわけのものではなし、また大した金持になれようという見込みもあるのじゃあございませんですから、いいかげんのところでごまかしてしまうんでございますよ...
中里介山 「大菩薩峠」
...正直のところ……」そうすると...
中里介山 「大菩薩峠」
...その当座は正直のところそう思いましたよ...
中里介山 「大菩薩峠」
...森川森之助でなければ――正直のところこの私であったかもしれないのです...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...まだ小判といふものをうんと持つてゐるから、旅籠賃の心配はさせねえ」平次はそんな事を言つてカラカラと笑ひますが、盜られた財布の中味は、正直のところ、路用から湯治(たうぢ)の雜用を併せて三兩二分ばかり、あとに殘つたのは、煙草入に女房のお靜が入れてくれた、たしなみの小粒(こつぶ)が三つだけです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...それくらゐのことなら言へるだらう」「正直のところを申上げますと...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...私はまだこんなで正直のところ気がおけますが...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...それに、もう一つ、Mさんがあんまり一所懸命になつていられるので、それをハズしてしまうのが、なんだかすまない――と言うよりも、Mさんが可哀そうなような氣が、正直のところ、ありました...
三好十郎 「肌の匂い」
...正直のところ、それは過ぎ去つてしまつたら、實になんでも無い事でした...
三好十郎 「肌の匂い」
...まったく正直のところ...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...けれども正直のところ...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...拙者はこの言葉を聞いて正直のところ涙が出そうであった...
夢野久作 「謡曲黒白談」
...――けだし正直のところ...
レスコーフ Nikolai Semyonovich Leskov 神西清訳 「真珠の首飾り」
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