...正直のところ阿Qが坐ったのは...
魯迅 井上紅梅訳 「阿Q正伝」
...しかし正直のところ辻永は私よりもずっと頭脳(あたま)がよかった...
海野十三 「地獄街道」
...そう云えばいつか本家の姉から、雪子ちゃんは幸子ちゃんの子ばかり可愛がって内の子供をさっぱり可愛がってくれないと嫌味(いやみ)を云われたことがあって、返答に困ったのであるが、正直のところ、雪子はちょうど悦子ぐらいの年頃の、悦子のような型に属する女の児が好きなのであって、本家の子供達と云うのは、なるほど大勢いることはいるけれども、女の児は今年二つになる赤ん坊が一人だけで、あとは男の児ばかりであるから、彼女の関心を惹(ひ)く程度は、とても悦子とは比べものにならないのであった...
谷崎潤一郎 「細雪」
...彼女にそう云うものが出来たのは、自分が仕向けたからではないか、―――そう考えると己(おの)れの卑劣さを咎(とが)めない訳には行かなかったが、正直のところ、いつかはこう云う時の来るのをひそかに望んでいただけであって、そんな望みを口へ出したこともなければ、進んで機会を作ってやった覚えもない...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...正直のところ、私は長年の下宿住居に飽きていたので、何とかして、この殺風景な生活に一点の色彩を添え、温かみを加えて見たいと思っていました...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...正直のところは愉快でなかった...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のおんな」
...正直のところ、リリーが昔を忘れてしまって現状に満足していられても、矢張腹が立つであろうし、そうかと云(い)って、虐待(ぎゃくたい)されていたり死んでいたりしたのでは尚悲しいし、孰方(どっち)にしても気が晴れることはないのだから、いっそ何も聞かない方がいいかも知れない...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のおんな」
...實もって正直のところ...
ドストエーフスキイ 神西清訳 「永遠の夫」
...正直のところ人物は感心しない...
中里介山 「大菩薩峠」
...我我が定律詩を捨てて自由詩へ走つた理由は、理論上では象徴主義の詩學に立脚してゐるが、趣味の上から言ふと、正直のところ、定律詩の韻律に退屈したのである...
萩原朔太郎 「青猫」
...正直のところ僕は君を思ひ出すのは好きぢやなかつた...
北條民雄 「道化芝居」
...一度お訪ねしたいなどと、亭主持の女にいはれて、それをまにうける私も愚かであつたが、正直のところ、不在中、もしかしてやつて来はせぬかと禁足された気持だつた...
宮地嘉六 「老残」
...これだけ私は気にかけて――正直のところ...
三好十郎 「廃墟(一幕)」
...怠惰なところも大それた虚栄心をも正直のところ多分にもっていた...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...万事はなはだ好運で(まったく正直のところ...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...なぜなら正直のところ...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...正直のところこんな心持ちを味わったのはこの時が初めてであった...
夢野久作 「暗黒公使」
...――世上の毀誉褒貶(きよほうへん)はどうせ善い噂はなく、悪いことのほうが多いだろうに、この筑前如きへ、それほどお心寄せとはかたじけない」「――が、正直のところ、お目にかかるまでは、もそっと威容堂々たるご体躯かと想像しておりましたが、それのみが少し案外な気がいたしました」「何せい、幼時は、水呑百姓の家に、辛くも生い育ったので、生来このとおり体がかぼそい...
吉川英治 「黒田如水」
便利!手書き漢字入力検索