...柵の前には一列をなして老いた櫻の樹が立つて居る...
石川啄木 「葬列」
...五月といへば、此處北海の浦々でさへ、日は暖かに、風も柔らいで、降る雨は春の雨、濡れて喜ぶ燕の歌は聞えずとも、梅桃櫻ひと時に、花を被(お)かぬ枝もなく、家に居る人も、晴衣して花の下行く子も、おしなべて老も若きも、花の香に醉ひ、醉心地おぼえぬは無いといふ、天(あま)が下の樂しい月と相場が定(きま)つて居るのに、さりとは恁(か)うした日もあるものかと、怪まれる許りな此荒磯の寂寞を、寄せては寄する白浪の、魂の臺までも搖がしさうな響きのみが、絶間もなく破つて居る...
石川啄木 「漂泊」
...近頃(ちかごろ)の噴火(ふんか)で最(もつと)もよく記憶(きおく)せられてゐるのは櫻島(さくらじま)(高(たか)さ一千六十米(いつせんろくじゆうめーとる))であらう...
今村明恒 「火山の話」
...南澤は寧ろ冬暖かな谿で春は櫻や梅の咲く處です...
江南文三 「佐渡が島のこと」
...『酒なくて何の己れが櫻かな』と云へり...
大町桂月 「越ヶ谷の半日」
...なほ櫻多き處を列擧すれば、九段の櫻が五百四十本、江戸川の櫻が三百八十本、日比谷公園の櫻が二百五十本、英國大使館前の櫻が二百八十本、芝公園の櫻が五百二十本、清水谷公園の櫻が四百五十本、淺草公園の櫻が二百三十本、山王公園の櫻が二百三十本、植物園の櫻が二百三十本、以上櫻の名所十五箇所、櫻の總數は、凡そ一萬四千本也...
大町桂月 「小利根川の櫻」
...私は今迄諸所の夜櫻を見たがこれ程委しく見た事はない...
土井八枝 「隨筆 藪柑子」
...梅から櫻へ移り行く春の風物を眺めて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...矢張り」平次は自分の家から數丁とも離れて居ない櫻の馬場に...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...人生(らいふ)の春のまたたく灯かげに嫋めかしくも媚ある肉體(からだ)をこんなに近く抱いてるうれしさ處女(をとめ)のやはらかな肌のにほひは花園にそよげるばらのやうで情愁のなやましい性のきざしは櫻のはなの咲いたやうだ...
萩原朔太郎 「青猫」
...○夢の國は流もありて花さきて音よき鳥さへ住むと聞けどもふる山のきこりをとこが瘤とりし鬼なつかしや舞はむともども牧の野の童に似たるあこがれが鞭もて死をば追ひ行くごとしつめたげの眼(まなこ)百千(ももち)は地にあれ愛にわが足る天(あめ)の星星手をあげて招けば肥えし野の牛も來りぬよりぬ何を語らむ朝櫻すこしこぼれぬ折からの歌もおはせば染め出で給へ夏衣御送りの燭灯(ともし)百千は櫻とて天童かざす別とあらば...
萩原朔太郎 「短歌」
......
萩原朔太郎 「短歌」
...憂鬱なる花見憂鬱なる櫻が遠くからにほひはじめた...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...品(ひん)のよき高髷(たかまげ)にお根(ね)がけは櫻色(さくらいろ)を重(かさ)ねたる白(しろ)の丈長(たけなが)...
樋口一葉 「うつせみ」
...菫(すみれ)、苧環(をだまき)、櫻草、丁字草(ちやうじさう)、五形(げんげ)、華鬘草(けまんさう)の類(たぐひ)は皆此方に栽(う)ゑて枕元を飾るべし...
正岡子規 「花枕」
......
室生犀星 「星より來れる者」
...八月二十九日よりは捕へらるゝ者、殺さるゝ者、獄死する者、數ふるに暇なく、九月一日には西岡邦之助、昌木晴雄、水野主馬、高橋上總、伊藤益良等小川を逃げて鹿島に行き、黒澤八郎、川又茂七郎、櫻山三郎、熊谷精一郎、林庄七郎、渡邊剛藏等と合した...
横瀬夜雨 「天狗塚」
...櫻田事變に參加した關鐵之助や大關和七郎などのいはゆる水戸浪士十七名の肖像畫があつて...
吉川英治 「折々の記」
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