...こんな時世に、色の恋のと言っては勿体(もったい)ない、私は行くよ」「えッ」「後藤の小倅のところへ行って、あの三戸前の蔵の中に、何が入って居るか見届けてやるよ」「本当かいお駒さん」「だけどもさ、あの青瓢箪(あおびょうたん)野郎の儘(まま)になると思えば、私は口惜(くや)しい」「お駒さん」「何んだって又、私はこんなに綺麗に生れ付いたんだい」「そんな事を言ったってお駒さん」「私は泣き度い、権の字、膝を貸しておくれよ」「御安い御用だとも」お駒は、権次の膝の上へ身を伏せて、泣いて泣いて泣き耽(ふけ)りました...
野村胡堂 「黄金を浴びる女」
...「お駒さん、無理もない事だが、相沢さんには罪が無い」「黙ってお出(いで)よ、権の字、お前さんもお節介だねえ、隠密などになったり、色事へ口を利いたり、畜生っ、惚れてやるから」「あッ」権次は飛退(とびの)こうとしました...
野村胡堂 「黄金を浴びる女」
...「権の字、私は口惜(くや)しい」「お駒さん、気を確(しっか)り持ってくれ」「相沢さんは勘定奉行与力で、二百石取の大身だろう、夫婦約束をしたって、水茶屋の娘の私とは提灯(ちょうちん)に釣鐘、末遂げられるものとは思っちゃ居ない...
野村胡堂 「黄金を浴びる女」
...厄介払(ばらい)をする積りで拵(こしら)えた細工でも無い――」「解って居るよ権の字...
野村胡堂 「黄金を浴びる女」
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