...それは人気のない墓地の隅に寺男か何かの掃き集めた樒(しきみ)の葉を焚いてゐる匂であらう...
芥川龍之介 「鴉片」
...僕は古樒(ふるしきみ)を焚(た)いていた墓地掃除の女に途(みち)を教わり...
芥川龍之介 「年末の一日」
...この盂蘭盆会(うらぼんえ)に水辺の家々にともされた切角灯籠(きりこどうろう)の火が樒(しきみ)のにおいにみちたたそがれの川へ静かな影を落すのを見た人々はたやすくこの自分のことばに首肯することができるだろうと思う...
芥川龍之介 「松江印象記」
...樒(しきみ)のうらがれを見た覚えがある…………とばかりで...
泉鏡花 「薄紅梅」
...有り合はせの楢(なら)と橡(とち)と桐と樒(しきみ)と柿と椎と松と杉と柚(ゆ)と桑とを詠み込んで見せたものだ...
薄田泣菫 「器用な言葉の洒落」
...樒(しきみ)に湿(うるお)いをくれたりしていたが...
徳田秋声 「足迹」
...樒(しきみ)や寒中から咲く赤椿など...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...樒柑(ママ)の霜よけ...
長塚節 「十日間」
...おくつきに詣でゝかくの如樒の枝は手向くべくなりにし君は悲しきろかも笥にもりてたむくる水はなき人のうまらにきこす水にかもあらむ廿五日...
長塚節 「長塚節歌集 上」
...なるべく大きな美しい樒の葉を一枚むしって...
正岡容 「小説 圓朝」
...東京では普通に樒(しきみ)の葉なども用いるという事であった...
正岡子規 「死後」
...死人の頬の処に樒の葉が触っているなどというのは...
正岡子規 「死後」
...かつて蕪村の「樒(しきみ)はみこぼす鼠かな」につきて同じやうな論があつたと思ふ...
正岡子規 「病牀六尺」
...樒(しきみ)の香も室に満ちている所であったから...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...樒を香以が墓に供することを頼んだ...
森鴎外 「細木香以」
...墓にまいる人に樒(しきみ)や綫香(せんこう)を売り...
森鴎外 「渋江抽斎」
...暗くじめじめした、かなり広い土間に、茣蓙(ござ)を敷いた腰掛が並び、壁によせて、萎(しお)れた菊や、樒(しきみ)や、阿迦桶(あかおけ)などが見える...
山本周五郎 「夕靄の中」
...或る窪地では思いがけない樒(しきみ)の密生林に出会った...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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