...「門前の土鳩(どばと)を友や樒売(しきみう)り」――こう云う天保(てんぽう)の俳人の作は必ずしも回向院の樒売(しきみう)りをうたったものとは限らないであろう...
芥川龍之介 「少年」
...僕は古樒(ふるしきみ)を焚(た)いていた墓地掃除の女に途(みち)を教わり...
芥川龍之介 「年末の一日」
...それぞれに、樒(しきみ)、線香を手向けたのがあって、十三塚と云う……一揆(いっき)の頭目でもなし、戦死をした勇士でもない...
泉鏡花 「怨霊借用」
...樒(しきみ)の実や蓼(たで)などといっしょに潰して毒流しの材料を作っているところであった...
田中貢太郎 「岩魚の怪」
...かれは樒(しきび)と山吹とを持って出かけた...
田山花袋 「田舎教師」
...いつものように樒(しきみ)の枯葉や犬の糞(くそ)などが散らかっていなかった...
田山花袋 「田舎教師」
...樒(しきみ)を持つて来て呉れたり...
田山録弥 「大阪で」
...枕許に樒(しきみ)と線香だけ立てたまゝの...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...はらはらと花散りこぼれて前に供へし樒(しきみ)の枝につもれるもをかしく...
樋口一葉 「ゆく雲」
...私は台所口で寺男が内職に売っている樒(しきみ)を四五本買って...
二葉亭四迷 「平凡」
...樒(しきみ)を提(さ)げて...
二葉亭四迷 「平凡」
...あちらこちらに咲いていた樒(しきみ)の花がもう散ったあとで...
堀辰雄 「花を持てる女」
...「ほんとに……」桶の中から取り出した樒を半分ずつにして...
正岡容 「小説 圓朝」
...かつて蕪村の「樒(しきみ)はみこぼす鼠かな」につきて同じやうな論があつたと思ふ...
正岡子規 「病牀六尺」
...かつてその前に樒(しきみ)のあるのを見たことを想起した...
森鴎外 「細木香以」
...それは願行寺の樒(しきみ)売の翁媼(おううん)の事である...
森鴎外 「細木香以」
...暗くじめじめした、かなり広い土間に、茣蓙(ござ)を敷いた腰掛が並び、壁によせて、萎(しお)れた菊や、樒(しきみ)や、阿迦桶(あかおけ)などが見える...
山本周五郎 「夕靄の中」
...或る窪地では思いがけない樒(しきみ)の密生林に出会った...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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