...七椀吃し得ざるに也ただ覚ゆ両腋習々清風の生ずるを...
岡倉覚三 村岡博訳 「茶の本」
...椀へ入れた黍(きび)の餅が眼に注(つ)いた...
田中貢太郎 「地獄の使」
...おかわりは如何(いかが)でございます」省三は婢(じょちゅう)の声を聞いて鯉の椀(わん)を下に置いた...
田中貢太郎 「水郷異聞」
...『まア綺麗ねえ!』『山はこれだから好いのねえ! 私にもその椀貸して?』かをるも自分で茶椀をその中に入れて二杯も三杯もつゞけて飮んだ...
田山花袋 「道綱の母」
...膳椀(ぜんわん)の類を出し並べて売りつけようとしている行商人もあった...
寺田寅彦 「写生紀行」
...剥椀(はげわん)で抄(すく)うてはざぶり/\水田にくれる...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...良寛さんといふ人は墓から椀を拾うて來たので良寛さんそれは死人の椀ぢやありませんかといつたら洗うてたべてるといつたといひますといふ樣なことであつた...
長塚節 「彌彦山」
...お椀ははじめ、まつすぐに黒く飛んでいきましたが、きらりと光つたかと思ふと向きをかへて、竹藪(たけやぶ)の中へななめに落ちこみました...
新美南吉 「百姓の足、坊さんの足」
...酒は一升徳利からその丹塗の大椀の底にちょっぴり注がれて...
服部之総 「加波山」
...早く冷(さ)めるようにお椀(わん)に盛ったまま...
久生十蘭 「キャラコさん」
...向(むこう)は鯛のあらい、汁は鯉こく、椀盛は若と蓮根、焼物は藻魚(もうお)の空揚げ、八寸はあまご、箸洗い、という献立だった...
久生十蘭 「ユモレスク」
...「見ず知らずの人は一椀の麦飯も食わしてはくれない...
正宗白鳥 「入江のほとり」
...双葉もせい子も既に汁をよそい終って自分達も椅子にかけて食卓についている)チッ! (椀の酒をグーッと一息に飲む...
三好十郎 「廃墟(一幕)」
...夕二椀半と極(き)めていた...
森鴎外 「渋江抽斎」
...それが杓子ではあまり値打がないというところで、お椀となった...
柳田国男 「故郷七十年」
...めい/\持つてゐた壺や小椀に汲めるだけ汲んだ...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...一椀の稗粥に会うと...
吉川英治 「新書太閤記」
...一椀の温かい汁でも――と彼女はつい今し方まで...
吉川英治 「日本名婦伝」
便利!手書き漢字入力検索