...その梢には若い緑の芽が柔かに霞んでゐた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...ザワザワと高く聳(そび)えている杉の梢(こずえ)が風をうけて鳴ります...
海野十三 「崩れる鬼影」
...そこらに程よく栽ゑられてゐた花樹の梢が...
薄田泣菫 「独楽園」
...其向ふは一段低くなつて居ると見えての梢の下にある家の藁葺屋根だけが地面にのつかつて居るやうに見えて居た...
寺田寅彦 「寫生紀行」
...果して辛夷の梢には...
外村繁 「落日の光景」
...折から梢の蝉の鳴音(なくね)をも一時(いちじ)に止(とど)めるばかり耳許(みみもと)近く響き出す弁天山(べんてんやま)の時の鐘...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...つづいて山おろしが庭先の松の梢を伝って...
中里介山 「大菩薩峠」
...心爲に動き即愚詠八首を以て之に答ふ(其六首を録す)津の國のはたてもよぎて往きし時播磨の海に君を追ひがてき淡路のや松尾が崎もふみ見ねば飾磨の海の家島も見ず飾磨の海よろふ群島つゝみある人にはよけむ君が家島冬の田に落穗を求め鴛鴦の來て遊ぶちふ家島なづかし家島はあやにこほしもわが郷は梢の鵙も人の獲るさとことしゆきて二たびゆかむ播磨路や家島見むはいつの日にあらむ女あり幼にして母を失ひ外戚の老婦の家に生長せり...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...先生は高い梢(こずえ)を見上げて...
夏目漱石 「こころ」
...樹牆のように密々と立ちならぶ湖畔の雑木林の梢の上に...
久生十蘭 「肌色の月」
...その高い梢からは一滴一滴と絶え間なく露が滴り落ちる...
エドガア・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「沈黙」
...雨が降って来た時に貴方と二人でこの窓の処に立って濡れた樹々の梢(こずえ)から来る薫(かおり)を聞いた事があります...
ホフマンスタアル Hugo von Hofmannsthal 森鴎外訳 「痴人と死と」
...湖心というようなところにその梢の影の頂を落します...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...ゆたかな梢をもたげつつ...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...これで私の長い長い詩はおしまいよエピローグ私は祈ります深い冬の空に向ってどうぞ私から希望をとりあげないで下さい私の合わせた掌がすこし揺れる竹藪の竹の梢もすこし揺れる杉の梢と椎の梢がかすかに揺れるそれがみんな冬の陽に静かに光りつつ祈っています合掌して祈りながら空に向って揺れています...
三好十郎 「詩劇 水仙と木魚」
...松の大木の梢にかゝつて居た」とあって其末に...
柳田国男 「山の人生」
...法輪寺川のほとりで会った梢(こずえ)が...
吉川英治 「親鸞」
...――その梢に、今日も伊豆の夕日が、はや寒々と訪れていた...
吉川英治 「源頼朝」
便利!手書き漢字入力検索