...肌の柔らかな女の体が傍に在るようで睡られなかった...
田中貢太郎 「立山の亡者宿」
...……とそのとき、彼が思いもかけなかったことには、気ぜわしげな足音とさらさらという衣ずれの音が聞えて、息はずませた女の声が囁やくように『まあやっとね!』と言ったかと思うと、二本の柔らかな、いい匂いのする、紛うかたなき女性の腕が、彼の頸へ巻きついて来て、彼の頬へあたたかい頬がひたりとばかり押しつけられたその途端に、接吻の音がちゅと響いた...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「接吻」
...柔らかな手がフェリアの手の上に重ねられた...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「緋のエチュード」
...フランス芸術の薄ぼかしの色や細分された柔らかな語調などには...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...それはいささかの芝居気もなく、平明枯淡な演奏ではあるが、柔らかな愛情と、ロマンティックな夢のうちに、そっと我らの心を押し包んでくれるからである...
野村胡堂 「楽聖物語」
...それなればこそ、撫(な)でるような、柔らかな、霰(あられ)のたばしるような、怒濤(どとう)のくるような響き――あの幽玄さはちょっと、再び耳にし得ない音色(ねいろ)だった...
長谷川時雨 「朱絃舎浜子」
...物柔らかな暮しと云うものは...
林芙美子 「新版 放浪記」
...あの柔らかな、暗いいろの衣が! それを奪ひとつてしまつたのは誰? 「あなたですか?」彼は自分でもこれまで聞いたことのないやうな聲で問うた...
ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 堀辰雄訳 「旗手クリストフ・リルケ抄」
...かつ葉は柔らかなれば温順な心情を表わしているともいえる...
牧野富太郎 「植物記」
...着ている着物の柔らかな白い布地から出るのか...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...木の柔らかな皮やいろんなものをたべて...
宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
...柔らかな白を幾枚か重ねたからだつき...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...艶つぽい柔らかな惨忍なやうな美しさが私をよく喜ばしめました...
室生犀星 「ザボンの実る木のもとに」
...柔らかな胸のふくらみが覗(のぞ)いていた...
山本周五郎 「薊」
...ややほそ面の平凡な顔だちであるが、しもぶくれのふっくらとした顎(あご)と、受け口の、ひき緊った唇(くち)つきと、そして右の眼尻にある、かなり大きな黒子(ほくろ)とが、凛(りん)とした表情に、柔らかな、幾らか嬌(なま)めいた印象を与えていた...
山本周五郎 「竹柏記」
...それは柔らかな白い光りで...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...時には何か柔らかな輪郭を持つ白いものを伴っていました...
J. S. レ・ファニュ J.S.Le Fanu The Creative CAT 訳 「ドラムガニョールの白い猫」
...そうして柔らかな...
和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
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