...果敢ない望が不圖胸の上に影を差したのである...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...さうして現實の中に生きて夢といふ果敢ないものを護るの努力は要するに烈風の前に裸火を護らうとするにも似た果敢ない努力である...
阿部次郎 「三太郎の日記 第三」
...この哀れ果敢なき葬列の声無く練り来るを見て...
石川啄木 「葬列」
...誠に短かい間の果敢ない夢であつた...
高濱虚子 「俳諧師」
...いつも従弟の顔を見るとその男らしい果敢な気風にかぶれるせいか...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...自分が一生に一番美しかったあの夜の光景(ありさま)を思い浮かべて果敢ない追憶に耽けることもある...
――モウパンサン―― 辻潤訳 「頸飾り」
...進取果敢な性格の一面も描き...
徳永直 「光をかかぐる人々」
...遠い昔の人を見るような果敢なさで彼の心に迫った...
豊島与志雄 「恩人」
...しかし私はここに不衛生なる裏町に住んでいる果敢ない人たちが今なお迷信と煎薬(せんじぐすり)とにその生命(せいめい)を托しこの世を夢と簡単にあきらめをつけている事を思えば...
永井荷風 「日和下駄」
...實際病院を出た當時十分彼の一身に落付が出來て再び僕に遇ふことも無いといふやうになつたであらうならば僕は果敢ない心持がしたであらうと思ふ...
長塚節 「開業醫」
...私の頭には今更のやうに人間の一生の果敢なさが感じられて來た...
南部修太郎 「霧の夜に」
...悲しくも人に隱れて故郷に歌などつくる我の果敢なさ...
萩原朔太郎 「短歌」
...人間の果敢ない孤独さを思はせる...
萩原朔太郎 「冬の情緒」
...不義不正とあくなき闘争を続ける果敢なる精神の象徴であった...
久生十蘭 「魔都」
...果敢ならしめねばならぬ...
三木清 「危機における理論的意識」
...その憧憬も夢想も見る間に果敢なく破れ去つてしまふ事をよく知つてゐる...
水上瀧太郎 「貝殼追放」
...ツワイクはこうやっていきなり作家の心臓の鼓動に手をふれる能力と果敢な精神をもっているのだけれども...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...おのづから世を恨み己を果敢なみ給ふ声の...
與謝野禮嚴 「禮嚴法師歌集」
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