...寂しい春の松の内を甚(はなはだ)だらしなく消光してゐた...
芥川龍之介 「東京小品」
...思ひ積りて熟(つら/\)世の無常を感じたる小松の内大臣(ないふ)重盛卿...
高山樗牛 「瀧口入道」
...「それでも、初春の松の内を、血でお穢しなさるのはよろしくないと思いますが」「そうか、さらば十五日過ぎてからにする」そう云うかと思うと主膳は小柄(こづか)を脱(ぬ)いて起ちあがり、いきなりお菊の右の手首を掴んで縁側に出て、その手を縁側に押しつけて中指を斬り落した...
田中貢太郎 「皿屋敷」
...しかしその時に限らず、ちょうどその五六日前にも、銀子たちは三台の車に分乗し、伊沢も仲間入りして、春よしのお神に引率され、羽田の穴守(あなもり)へ恵方詣(えほうまい)りに行き、どうかした拍子に、銀子は春次と一緒に乗っている伊沢の車に割り込み、染福が一人乗りおくれてまごまごしているのを見たが、穴守へついてからも、染福の銀子を見る目が嶮(けわ)しく光り、銀子は何のこととも解らず、謎(なぞ)を釈(と)くのに苦しんだが、深く気にも留めず、帰りは一台の車にタイヤのパンクがあり、いっそ三台とも乗りすてて、川崎から省線で帰ることにしたのだったが、松の内のことで、彼女たちは揃(そろ)って出の支度(したく)であり、縁起ものの稲穂の前插(まえざ)しなどかざして、しこたま買いこんだ繭玉(まゆだま)や達磨(だるま)などをてんでにぶら下げ、行きがけの車に持ち込んだウイスキーと、穴守のお茶屋で呑(の)んだ酒にいい加減酔っていたので、染福は何かというと銀子に絡(から)んで来るのだった...
徳田秋声 「縮図」
...私はその淋しい春の松の内に...
夏目漱石 「硝子戸の中」
...松の内から藥箱を持込まれて以ての外の機嫌だつたのです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「何だ、松の内から、借金取でもあるまい」「そんな氣障(きざ)なもんぢやありません、お濱が來ましたよ」「何? 相模屋のお濱が、逃すなツ」平次は飛起きると、ろくに顏も洗はずに、お濱を案内させました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...松の内から借金取でも飛込んだといふのかえ」錢形の平次は珍らしく威勢よく迎へました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「新婚」松の内済んで...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...鉦(かね)起し(正月十六日)正月松の内は仏いじりはせぬようにしている...
柳田国男 「年中行事覚書」
...試験勉強でたいへんだろ?」あわただしく松の内のすぎた水曜日で...
山川方夫 「その一年」
...その他「松の内のんこれ双六」という流行歌を入れた双六などがある...
山本笑月 「明治世相百話」
...新年松の内のみこの研究を中止する習慣は...
横光利一 「欧洲紀行」
...ことしの松の内は...
吉川英治 「折々の記」
...この松の内...
吉川英治 「新書太閤記」
...そのため、孤立の苦境に落ち入った家康の複雑なる心中の煩忙(はんぼう)と、小牧の後始末と、次に――秀吉対家康の和睦に移って、大坂へ人質を送るやら、家中の諸将の不平と憤懣(ふんまん)をなだめるやら、ここ十一月から十二月の初めにかけて、浜松の内外は、まったく、暗い冬を迎えていたところだ...
吉川英治 「新書太閤記」
...ちょうど松の内の七日である...
吉川英治 「親鸞」
...松の内が過ぎると...
吉川英治 「べんがら炬燵」
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