...が、あの辺は家々の庭背戸が相応に広く、板塀、裏木戸、生垣の幾曲り、で、根岸の里の雪の卯(う)の花、水の紫陽花(あじさい)の風情はないが、木瓜(ぼけ)、山吹の覗かれる窪地の屋敷町で、そのどこからも、駿河台(するがだい)の濃い樹立の下に、和仏英女学校というのの壁の色が、凩(こがらし)の吹く日も、暖かそうに霞んで見えて、裏表、露地の処々(ところどころ)から、三崎座の女芝居の景気幟(のぼり)が、茜(あかね)、浅黄(あさぎ)、青く、白く、また曇ったり、濁ったり、その日の天気、時々の空の色に、ひらひらと風次第に靡(なび)くが見えたし、場処によると――あすこがもう水道橋――三崎稲荷(いなり)の朱の鳥居が、物干場の草原だの、浅蜊(あさり)、蜆(しじみ)の貝殻の棄てたも交る、空地を通して、その名の岬に立ったように、土手の松に並んで見通された...
泉鏡花 「薄紅梅」
...その一つはこれに木瓜(もくかう)の青貝(あをがひ)螺鈿(らでん)の卓(しよく)が添はつてゐた事で...
薄田泣菫 「茶話」
...木瓜(ぼけ)厨子...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
...木瓜(ぼけ)の木をやたらにたたきながら...
寺田寅彦 「亮の追憶」
...路傍(みちばた)の草木瓜(くさぼけ)の蕾(つぼみ)が朱(あけ)にふくれた...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...すぐ向うに木瓜の真赤な花が...
豊島与志雄 「同胞」
......
内藤鳴雪 「鳴雪句集」
...うら庭の木瓜蕾ふくらみて赤く...
長塚節 「十日間」
...木瓜の葉は花を包みて...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...その日は木瓜(ぼけ)の筆架(ひつか)ばかり気にして寝た...
夏目漱石 「草枕」
...「まだ木瓜の中に御用があるんですか」「もう無いんです...
夏目漱石 「草枕」
...ケンブリッジでは木瓜(ぼけ)を同じように仕立てたのを見たけれども...
野上豊一郎 「シェイクスピアの郷里」
...木瓜(ぼけ)に似た花を付けている榲(クインス)...
野上豊一郎 「シェイクスピアの郷里」
...ふと六畳の方の窓辺にある木瓜(ぼけ)の木と芙蓉の木が思い出された...
原民喜 「忘れがたみ」
...木瓜の花も芙蓉の花も...
原民喜 「忘れがたみ」
...――その牡丹は、けふもまだあちこちに咲き殘つてゐる椿、木瓜(ぼけ)、海棠(かいだう)、木蓮、蘇芳(すはう)などと共に、花好きの妻の母が十年近くも一人で丹精した大事な植木です...
堀辰雄 「行く春の記」
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横瀬夜雨 「花守」
...〔無題〕ちび筆に線を引きて半紙に木瓜の枝を写生し...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
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