...社会の幸福の根本的要素であるといふ真理に対して実に朦朧たる観念ほか有してはゐない様である...
エレン・ケイ 伊藤野枝訳 「恋愛と道徳」
...彼は酔眼朦朧(すいがんもうろう)として...
魯迅 井上紅梅訳 「阿Q正伝」
...赤ん坊の泣きわめく聲が湧き起りうす汚ない朧ななりをしたそこら界隈の男や女が小供を肩車に乘せたり三人も五人も一人でゾロ/\引張つたり火事で燒き出された人のやうに小供の着替やむつきを兩の小脇に一杯抱へて恐ろしい路次の闇から異形な風で現はれ赤い燈火が滲みもう/\と暖い煙の蒸しこめた錢湯へ吸ひこまれて行く...
千家元麿 「自分は見た」
...五階になつた塔が朦朧として右側に見えた...
田中貢太郎 「黒い蝶」
...谷向うの村は朦朧(ぼんやり)とうち煙り...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...オリヴィエはその朦朧(もうろう)とした言い渋りがちの魂を...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...種彦は先ほどの恐ろしい光景をも全く忘れてしまい今は何という訳(わけ)もなく二十歳(はたち)の若い姿を朧夜(おぼろよ)の河岸(かわぎし)に忍ばせて...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...その朦朧(もうろう)たるまなざしに早くも認めたのが...
中里介山 「大菩薩峠」
...朧(おぼろ)に見ゆる情けの波のかがやきを男はひたすらに打ち守る...
夏目漱石 「野分」
...彼女の意識は何時でも朦朧(もうろう)として夢よりも分別がなかった...
夏目漱石 「道草」
...必竟どうするんだろうという意味も朧気(おぼろげ)に交(まじ)っていた...
夏目漱石 「道草」
...夢見るやうな朧(おぼろ)の中には...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...ただその朧ろげな二つの気持を「空漠」とした白さが濡紙のやうにフワリと覆つて...
牧野信一 「失題」
...インヂアンのガウンでロシナンテを飛したいつぞやの晩と同じやうな朧月夜であつた...
牧野信一 「変装綺譚」
...婚礼の白いヴェイルを裾長くひいた女の後姿が朦朧(もうろう)と消えこむのを...
宮本百合子 「雨の昼」
...半ば朦朧(もうろう)状態に於て意識せるものとするも...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...肌の触れ合うほど間近に顔を並べている隣りの客の顔さえ朧だった...
横光利一 「旅愁」
...「床へさし込む朧(おぼ)ろ月」...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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