...けれども札幌では十分朝寒といっていい時節になった...
有島武郎 「星座」
...うしろの松にしろ、朝寒や、松をよろへる、蔦うるし這はせて寒し庭の松、仕舞ひには、飛行機も東下りや朝ぐもりなんて、僕のところの唐紙のきれつぱしに書いてゐたではないか...
小穴隆一 「二つの繪」
...皮膚が荒れてくる旅をつゞけてゐるすこしばかり買物もして旅の夫婦は石刻む音のしたしくて石刻む朝寒に旅焼けの顔をならべて・片輪同志で仲よい夫婦の旅・ざくりざくり稲刈るのみの・秋晴れの砂をふむよりくづれて鶏(トリ)を叱る声もうそ寒う着いたいそがしう飯たべて子を負うてまた野良へ・木葉落ちる声のひととき・貧乏の子沢山の朝から泣いてゐる・それでよろしい落葉を掃く十月十五日晴...
種田山頭火 「行乞記」
...じつさい寒くなつた、朝寒夜寒、障子をしめずにはゐられないほどである...
種田山頭火 「行乞記」
...・最後の飯の一粒まで今日が終つた・朝寒の針が折れた入庵一週(マヽ)年ちかし・蓼の花もう一年たつたぞな追加備忘・道がなくなり落葉しようとしてゐる・水に水草がびつしりと旅・たゞあるく落葉ちりしいてゐるみち九月十一日―十月一日『行乞記』...
種田山頭火 「行乞記」
...朝寒、米磨ぐ水がやゝつめたく、汲みあげる水がほのかにあたゝかい...
種田山頭火 「其中日記」
...朝寒、遠く蜩のうた、身辺整理、読書...
種田山頭火 「其中日記」
...早起、朝寒、火が恋しくなつた...
種田山頭火 「其中日記」
...朝寒、袖なしを出して着た...
種田山頭火 「其中日記」
...まだ学校へも行(ゆ)かぬ子供の時には朝寒ければゆつくりと寝たいだけ寝て居(ゐ)られたばかりでなく...
永井荷風 「すみだ川」
...山谷堀(さんやぼり)の彼方(かなた)から吹いて来る朝寒(あさざむ)の川風に懐手(ふところで)したわが肌の移香(うつりが)に酔(え)いながら山(やま)の宿(しゅく)の方へと曲ったが...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...朝寒(あささむ)や生きたる骨を動かさず十九余はこの心持をどう形容すべきかに迷う...
夏目漱石 「思い出す事など」
...箱根風朝寒しとはなけれども生薑の味す川より吹くは之も哈爾賓の雪と同じ時の作で...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...朝寒(あささむ)...
正岡子規 「俳諧大要」
......
松本たかし 「松本たかし句集」
...心なしか生絹は冴(さ)えた美しい顔にやや朝寒むの臙膩(えんじ)をひいた頬をてらして...
室生犀星 「荻吹く歌」
...半之助も今どこかで人の情けをうけて暮しているかもわからない」良左衛門は冷えきった朝寒から赤児をまもるように...
山本周五郎 「初蕾」
...朝寒の東京驛前の廣場に立つてゐると...
吉川英治 「折々の記」
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