...玩具屋の店の中は――殊にこの玩具の空箱(あきばこ)などを無造作(むぞうさ)に積み上げた店の隅は日の暮の薄暗さと変りはない...
芥川龍之介 「少年」
...人一人居ない此室の暗さは土窟にでも入つた樣で...
石川啄木 「鳥影」
...で、その下りる方へ半町ばかりまた足探り試みたのであるが、がけの陰になって、暗さは暗し、路は悪し、灯(ひ)は遠し、思切って逆戻りにその饂飩屋を音訪(おとず)れたのであった...
泉鏡花 「唄立山心中一曲」
...坂道の暗さに似ず...
泉鏡花 「貝の穴に河童の居る事」
...だが、不意の暗さに、彼等はまだ窓の二人には気がつかぬ...
江戸川乱歩 「黄金仮面」
...餘りに明るい光りが暗さを生むやうに淋しいうつろな家々の近所で勇しい雀ばかりが啼いてゐる...
千家元麿 「自分は見た」
...僕の暗さは、誰(だれ)にもわからぬ...
太宰治 「正義と微笑」
...雷の来そうな空の熱と重苦しさと暗さがあたりの風景にいつそう近くせまつてきているらしかつた……むらがる雲が...
G・K・チェスタートン G. K. Chesterton 村崎敏郎訳 「とけない問題」
...絶望のそれに似た暗さを湛えてはいないだろうか...
豊島与志雄 「今日の条件」
...あの伝説、暗さへの没入、それからの回復、この構成の中に注意すべき二つの要素があると思われる...
中井正一 「脱出と回帰」
...漸く四辺(あたり)の暗さが薄らいで来た...
中島敦 「山月記」
...眞夜中過ぎの劇しい寒さにこごえたやうな電燈の光の薄暗さ...
南部修太郎 「ハルピンの一夜」
...苦しさと暗さとから...
葉山嘉樹 「海に生くる人々」
...彼はこの暗さと吹きすぎる川風のなかで...
本庄陸男 「石狩川」
...都の多くの酒場では相手の顔が判別し難い暗さであるから...
牧野信一 「川蒸気は昔のまゝ」
...三十何年間の女王としての経験からマリーの悲劇を予見し自国の将来にも暗さを見たのでしたが...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...辷(すべ)り落ちていく暗さもあった...
横光利一 「微笑」
...光及ばぬ隅の暗さを見入りて我をや切に恋ひ居(ゐ)給ふらん...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
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