...下に、荷車の片輪はずれたのが、塵芥(ごみ)で埋(うま)った溝へ、引傾いて落込んだ――これを境にして軒隣りは、中にも見すぼらしい破屋(あばらや)で、煤(すす)のふさふさと下った真黒(まっくろ)な潜戸(くぐりど)の上の壁に、何の禁厭(まじない)やら、上に春野山、と書いて、口の裂けた白黒まだらの狗(いぬ)の、前脚を立てた姿が、雨浸(あめじみ)に浮び出でて朦朧(もうろう)とお札の中に顕(あらわ)れて活(いけ)るがごとし...
泉鏡花 「婦系図」
...春野も近づいて、源治はヒヨツコリと耳寄りな話を聞きこんだ...
伊藤永之介 「押しかけ女房」
...春野は切りぬけられる――源治は思わず枕から首を浮かしたが...
伊藤永之介 「押しかけ女房」
...笑む稚児よ……笑(ゑ)む稚児(ちご)よわが膝に縋(すが)れ水脈(みを)をつたつて潮(うしほ)は奔(はし)り去れわたしがねがふのは日の出ではない自若(じじやく)として鶏鳴をきく心だわたしは岩の間を逍遙(さまよ)ひ彼らが千の日(ひ)の白昼を招くのを見たまた夕べ獣(けもの)は水の畔(ほとり)に忍ぶだらう道は遙に村から村へ通じ平然とわたしはその上を往(ゆ)く早春野は褐色と淡(あは)い紫...
伊東静雄 「詩集夏花」
...横井春野君が三田稲門(とうもん)戦の試合を見て帰って来たところで...
田中貢太郎 「屋根の上の黒猫」
...一昨年の春野村と云う人の縁談を断った時...
谷崎潤一郎 「細雪」
...あれは帝劇の春野綺羅子(きらこ)よ」「へえ...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...春野綺羅子といつの間にかお友達になったりして! ねえ...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...「これが春野綺羅子嬢です...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...春野はまた春になつて来た...
田山録弥 「不思議な鳥」
...短歌春の野にさかりににほふしどみの木あしびと否と我はおやじと春の野にい行かむ人しいつくしきしどみの花は翳してを見らめ雉子なく春野のしどみ刺しどみおほにな觸りそその刺しどみわが知れる三浦氏は眞宗の僧なるが...
長塚節 「長塚節歌集 上」
...衰えは春野焼く火と小さき胸を侵(お)かして...
夏目漱石 「薤露行」
...春野八重子と秋月美恵子だけよし...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...春野八重子の引抜きをすること...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...高知県に春野神社という社があるそうでございます...
三澤勝衛 「自力更生より自然力更生へ」
...ついにその河岸に「春野神社」として祀られるようになり...
三澤勝衛 「自力更生より自然力更生へ」
...雲はたなびき――春野の駒か...
吉川英治 「平の将門」
...春野のうららかな静寂(しじま)をやぶッて...
吉川英治 「宮本武蔵」
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