...病めば長い長い旅・こゝに住みたい水をのんで去る(添作)・あすもあたゝかう歩かせる星が出てゐる・ふんどしは洗へるぬくいせゝらぎがあり(木賃宿)春夜のふとんから大きな足だ□・枯草の風景に身を投げ入れる(改作)四月六日晴れたり曇つたり...
種田山頭火 「行乞記」
...なんと草の芽が出る出る・けさはお粥を煮るとて春の黴(カビ)・春さむく針の目へ糸がとほらない春夜...
種田山頭火 「其中日記」
...・大石小石ごろ/\として春夜露もしつとり春であります・春夜は汽車の遠ざかる音も・もう郵便がくるころの陽が芽ぶく木々・風がほどよく春めいた藪から藪へ・春風のローラーがいつたりきたり・伐り残されて芽ぶく木でたゝへた水へ三月二日晴...
種田山頭火 「其中日記」
...大川端雨後春夜の眺望方に一刻千金の趣あり...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...半月空に泛び淡烟蒼茫として街を罩めたるさま春夜の如し...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...春夜の如し...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...お孃さん!寄生蟹のうた潮みづのつめたくながれて貝の齒はいたみに齲ばみ酢のやうに溶けてしまつたああここにはもはや友だちもない 戀もない渚にぬれて亡靈のやうな草を見てゐるその草の根はけむりのなかに白くかすんで春夜のなまぬるい戀びとの吐息のやうです...
萩原朔太郎 「青猫」
...いのちは光をさして飛びかひ光の周圍にむらがり死ぬああこの賑はしく 艶めかしげなる春夜の動靜露つぽい空氣の中で花やかな弧燈は眠り 燈火はあたりの自然にながれてゐる...
萩原朔太郎 「青猫」
...ああこの溶けてゆく春夜の灯かげに厚くしつとりと化粧されたるひとつの白い額をみるちひさな可愛いくちびるをみるまぼろしの夢に浮んだ顏をながめる...
萩原朔太郎 「青猫」
...春夜のただよふ靄の中でわたしはあなたの思ひをかぐあなたの思ひは愛にめざめてぱつちりとひらいた黒い瞳(ひとみ)は夢におどろきみしらぬ歡樂をあやしむやうだ...
萩原朔太郎 「青猫」
...ああ この春夜のやうになまぬるくべにいろのあでやかな着物をきてさまよふひとよ妹のやうにやさしいひとよ...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...渚にぬれて亡靈のやうな草を見てゐるその草の根はけむりのなかに白くかすんで春夜のなまぬるい戀びとの吐息のやうです...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...春夜の暖熱に包まれているかのような...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...相伝う毎春夜牝馬を放ち...
南方熊楠 「十二支考」
...とうていその顔付から遁(に)げ出すことのできない宿命じみた蒼白い顔付――それが春夜にもなお電燈の下に座っている――...
室生犀星 「しゃりこうべ」
...茫々たる春夜を守りつづけてゐた...
室生犀星 「鉄の死」
...「劉君美春夜酔後過丸山花街...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...天地は穏やかな春夜の朧(おぼろ)...
吉川英治 「江戸三国志」
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