...生きて帰らぬ覚悟だと言つて堅く断つたが...
石川啄木 「鳥影」
...しばらく消息を断つていた長男の松太が...
伊藤永之介 「押しかけ女房」
...私は子供ながらも無礼なS先生の問ひ方や態度に激しい憤りを覚えながらもS先生に断つたと云ふ安神(あんしん)でその時間が来る迄は図画のことなどはけろりと忘れてゐました...
伊藤野枝 「嘘言と云ふことに就いての追想」
...よく断つておくが...
薄田泣菫 「茶話」
...十八日、戊戌、相州広元朝臣を招請して仰せられて云ふ、将軍家大将に任ずる事、内々思食し立つと云々、右大将家は、官位の事宣下の毎度、之を固辞し給ふ、是佳運を後胤に及ばしめ給はんが為なり、而るに今御年齢未だ成立に満たず、壮年にして御昇進、太だ以て早速なり、御家人等亦京都に候せずして、面々に顕要の官班に補任すること、頗る過分と謂ひつ可きか、尤も歎息する所なり、下官愚昧短慮を以て、縦ひ傾け申すと雖も、還つて其責を蒙る可し、貴殿盍ぞ之を申されざる哉と云々、広元朝臣答申して云ふ、日来此の事を思ひて、丹府を悩ますと雖も、右大将家の御時は、事に於て下問有り、当時は其儀無きの間、独り腸を断つて、微言を出すに及ばす、今密談に預ること、尤も以て大幸たり、凡そ本文の訓する所、臣は己を量りて職を受くと云々、今先君の遺跡を継ぎ給ふ計なり、当代に於ては、指せる勲功無し、而るに啻に諸国を管領し給ふのみに匪ず、中納言中将に昇り給ふ、摂関の御息子に非ずば、凡人に於ては、此儀有る可からず、争か嬰害積殃の両篇を遁れ給はんか、早く御使として、愚存の趣を申し試む可しと云々...
太宰治 「右大臣実朝」
...セルギウスはそれをきつぱり断つた...
レオ・トルストイ Lev Nikolaevich Tolstoi 森林太郎訳 「パアテル・セルギウス」
...寺院に猫――寺院というものは葷肉(くんにく)を断つことを原則としているのだから...
中里介山 「大菩薩峠」
...いっそ首でも縊(くく)って我と我が命を断つに如(し)かないと屡々(しばしば)思い詰めた事でありました...
西尾正 「陳情書」
...松の亭の席主が八百円の金を貸してくれたので播重と手を断つことになったのであった...
長谷川時雨 「豊竹呂昇」
...「浪人」との接触を断つことを進言している...
服部之総 「尊攘戦略史」
...不断つつしんでお出遊ばすだけ身にしみる事も深からう...
樋口一葉 「うつせみ」
...断つても断てぬ子の可憐(かわゆ)さに...
樋口一葉 「十三夜」
...様々な口実をつくつて断つた...
牧野信一 「或る日の運動」
...真実呼吸を断つた...
牧野信一 「泉岳寺附近」
...こゝから二十里あまり離れてゐる海辺の寒村に彼のたつたひとりの小さな弟と二人で佗しく暮してゐたタキノの母親にとつての副詞に過ぎないことを断つて置かう...
牧野信一 「貧しき日録」
...もう遅いからと切りに断つて...
牧野信一 「昔の歌留多」
...自然が人間の心情に幾重にもかたく巻きつけたこれらの絆を断つよりもむしろ繋ぎとめておくために苦労するのは害悪ではないのであろうか...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...しかしわれには踏み込んで鉄をも断つべき三尺の宝刀がある...
山本周五郎 「新潮記」
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