...偶相邂逅すれば緊く相抱擁して何時までも離れることを欲しなかつた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...じっさい町中の人が護送中の牛を途上に擁して...
谷譲次 「踊る地平線」
...それをまた途上に擁して毎晩「卓子(テーブル)」で見た顔が拳銃(ピストル)を突きつけるやら――「みどり色の誘惑」は時として意外な方向と距離にまで紳士淑女をあやつって止(や)まない...
谷譲次 「踊る地平線」
...そのおれば嬋娟(せんけん)たる美姫を擁して巍々(ぎぎ)たる楼閣に住し...
徳富蘇峰 「将来の日本」
...遂に自由黨總理たる勢力を擁して入て内相の椅子に就く是れ政黨首領として他の一侯兩伯に比し...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...被を擁して眠に入る...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...鈴木安芸守はこういうように言うのです、「策動はしているが、結局はモノになるまい、蛤門(はまぐりもん)の失敗を、再三繰返すのみに過ぎまい、過激の壮士共や、変を好む浪人共と違い、朝廷におかれても、心ある堂上公卿は、内心みな徳川贔屓(とくがわびいき)じゃ、徳川家の悪いところは悪いで改めて行き、やっぱり三百年の重しのかかった勢いでないことには、この内外の多難は救われない、たとえ、建武の中興が成ったとしても、帰するところは、やはり武家の世だ、かりに、徳川家に代って、薩摩あたりが勢力を張ろうとしても、長州が許すまい、幕府がある間は薩長相提携もしようが、徳川退くならば彼等の間に当然の同志討ち、いずれの勢力も、徳川家の多年の威望には及ばない、とすれば、彼等の為すところは、朝廷を擁して、その御稜威の下に権柄をわが手に占めて行こうとする策略があるのみだが、そうなってみると、堂上公卿が得たりとばかり手を拱(きょう)してはいないのだ、位倒れで実力の無い公卿勢力を、左様に見くびってはならない、力は無くとも、歴史を持っている彼等の情実というものは、なかなか侮り難いものでな、武家の力だけでは如何とも致し難いものがある、そこで、四方八方の因縁がからみつくから、たとえ、徳川衰えたりといえども、一朝一夕で、天下の形勢が変るということはまずあるまい」というのが、鈴木安芸守の結論らしい...
中里介山 「大菩薩峠」
...此の峻嶺を擁して作並の温泉宿があるのである...
長塚節 「旅の日記」
...武器を擁して無言の威圧をしめしていたが...
久生十蘭 「海難記」
...藤田は関流の大立物という地位を擁してともかく尊大に構えている...
三上義夫 「和算の社会的・芸術的特性について」
...ダーウィンの『探検航行記(ジョーナル・オヴ・レサーチス)』に南米土人が幼子を抱え裸で裸馬を擁して走り去る状を記し...
南方熊楠 「十二支考」
...無數の名門を擁してゐる...
吉川英治 「折々の記」
...相擁して温(ぬく)め合うのみであった...
吉川英治 「三国志」
...貂蝉(ちょうせん)を擁して...
吉川英治 「三国志」
...一個の首桶を擁して...
吉川英治 「私本太平記」
...しかしこれは不知哉丸を擁している郷党たちの意見もきいてみねばならず...
吉川英治 「私本太平記」
...かぎりない衆民を擁してゆく世々の末までを思えば...
吉川英治 「新書太閤記」
...将軍たるべき足利義昭を擁して上京して来たのである...
和辻哲郎 「鎖国」
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