...もう鼻を掩う事を忘れていた...
芥川龍之介 「羅生門」
...遁辞や弥縫の答弁で天下公衆の耳目を掩うわけにはゆかぬ」と追及した...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...その真の起原を掩うている偽りの雲を掃い去ったなら...
ピョートル・アレクセーヴィチ・クロポトキン Pyotr Alkseevich Kropotkin 大杉栄訳 「青年に訴う」
...自分は目を掩うてゐるのだからまだいゝけれど...
鈴木三重吉 「赤い鳥」
...鼻口許をマスクで掩うて...
橘外男 「仁王門」
...私は顔を掩うて号泣しました...
橘外男 「仁王門」
...雪の黄昏を眺めた私の心のやるせない淋しさ――それは世界を掩うて近寄り来る死の蔭の冷(ひい)やりとした歩(あゆ)みをわれ知らず感じたのでした...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...決して掩うべからざるなり...
徳富蘇峰 「吉田松陰」
...夜九時隣室のラヂオに驚かされ耳を掩うて門外に出づ...
永井荷風 「荷風戰後日歴 第一」
...日本にあっては霖雨の時節閉切った電車の中屡(しばしば)鼻を掩う事あり...
永井荷風 「偏奇館漫録」
...大きな白帆は遠い野を掩うて姿見へ大きく映る...
長塚節 「おふさ」
...然し單衣の裾はぐるつとかゝげて帶を掩うて紐で括つてあつたから白いゆもじが目に立つのみで其帶の結び目はそれはかゝげた裾に隱されて見えなかつた...
長塚節 「旅の日記」
...中央の山陵は杉の木が一杯に掩うて蔚然と小山のやうである...
長塚節 「松蟲草」
...女は私に近よつた時急に両手の袖を重ねて胸を掩うた...
長塚節 「隣室の客」
...それから、今日のこと――あたしの素姓や、金五郎さんとのこと、ちょっとでも、人にしゃべったら、やっぱり、命がないものと、お思い」染奴は、袂で顔を掩うと、はげしく泣きだした...
火野葦平 「花と龍」
...それらの作品の上にはいづれにも「點鬼薄」の持つてゐた暗鬱さが掩うてゐるが...
堀辰雄 「芥川龍之介論」
...わたくしは詩巻を掩うて勤向覚書を繙(ひもと)く...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...耳を掩うように手を当て眼を閉じていた...
若杉鳥子 「ある遊郭での出来事」
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