...彼の方をいくども拝むのであった...
海野十三 「棺桶の花嫁」
...三十円の為替を拝むにちがいない...
太宰治 「花燭」
...お蘭はその翌(あく)る日、徳右衛門の居間に呼ばれて、本町紙屋彦作(かみやひこさく)様と縁談ととのった、これも日蓮様のおみちびき、有難(ありがた)くとこしなえの祝言(しゅうげん)を結べ、とおごそかに言い渡せば、お蘭はぎょっとしたが色に出さず、つつしんで一礼して部屋から出て、それから飛ぶようにして二階に駈(か)け上り、一筆しめしまいらせ候(そうろう)、来たわよ、いよいよ決行の日が来たわよ、私は逃げるつもりです、今宵(こよい)のうちに迎えたのむ、拝む、としどろもどろに書き散らし、丁稚(でっち)に言いつけて隣町へ走らせ、次郎右衛門はその手紙をざっと一読してがたがた震え、台所へ行って水を飲み、ここが思案のしどころと座敷のまん中に大あぐらをかいてみたが、別に何の思案も浮ばず、立ち上って着物を着換え、帳場へ行ってあちこちの引出しを掻きまわし、番頭に見とがめられて、いやちょっと、と言い、何がしの金子(きんす)をそそくさと袂(たもと)にほうり込んで、もう眼に物が見えぬ気持で、片ちんばの下駄(げた)をはいて出て途中で気がついて、家へ引返すのもおそろしく、はきもの屋に立ち寄って、もうこれだけしかお金が無いのだと思うと、けちになって一ばん安い草履を買い、その薄っぺらな草履をはいて歩くとぺたぺたと裸足(はだし)で地べたを歩いているような感じで心細く、歩きながら男泣きに泣いて、ようやく隣町の徳右衛門の家の裏口にたどりつくと、矢のようにお蘭は走り出て、ものも言わず次郎右衛門の手を取りさっさと自分からさきに歩き出し、次郎右衛門はあんまの如く手をひかれて、ぺたぺたと歩いて、またも大泣きに泣くのである...
太宰治 「新釈諸国噺」
...手を擦り合わせて拝む真似(まね)をした...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のおんな」
...まはつて拝む大仏さま師走の街のラヂオにもあつまつてゐる・小春日有縁無縁の墓を洗ふ送らるゝぬかるみの街おいしいにほひのたゞよふところをさまよふぬかるみもかはくけふのみち・近づいてゆく山の紅葉の残つてゐる・どつかりと腰をおろしたのが土の上で・三界万霊の石塔傾いてゐるころがつてゐる石の一つは休み石・酔がさめて埃つぽい道となるからだあたゝまる心のしづむ(武蔵温泉)福岡の中州をぶら/\歩いてゐると...
種田山頭火 「行乞記」
...神を拝むには離れて拝めと教えた秘伝も...
中里介山 「大菩薩峠」
...世の中で一番明るい御天道様(おてんとさま)さえもう拝む事はできなくなりました...
夏目漱石 「行人」
...車大地や六波羅の地蔵堂よと伏し拝む』と歌ふ...
野口米次郎 「能楽論」
...門番を拝むのでした...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...後ろには畳の上に伏し拝む徳兵衛...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...拝むでもありませんが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...かく忌み嫌わるるもの故諸獣を神とし尊ぶ例多きも鼠を拝む例は少ない...
南方熊楠 「十二支考」
...心には拝むようにして外に出るを拒みたるも...
宮崎湖処子 「空屋」
...日の神を拝む信仰は...
柳田国男 「海上の道」
...牢のヨハンは拝むような表情をして...
吉川英治 「江戸三国志」
...「ありがたい」拝むばかりな...
吉川英治 「新・水滸伝」
...こんな不出来な伜(せがれ)の手を取って拝むやつがあるものか...
吉川英治 「新・水滸伝」
...「ほんに、お前さんの良い心もちは不愍(ふびん)じゃが、見つかると、わしらまで、後で怖ろしい目に会わされるでの」「そうじゃ、やめなされ、やめなされ」お吉は、拝むように、そういって拒(こば)む人(ひと)たちへ、なお縋(すが)った...
吉川英治 「親鸞」
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