...僕はふと二字丈け抹消した文字のあるのに気附いた...
江戸川乱歩 「黒手組」
...伯爵がいかに躊躇逡巡したか――最後の瞬間まで彼は躊躇していた――この事実は抹殺して...
リットン・ストレチー Lytton Strachey 片岡鉄兵訳 「エリザベスとエセックス」
...ともかく丁抹国内でドラーゲ公といえば...
橘外男 「グリュックスブルグ王室異聞」
...云わば文学プロパーとも云うような特殊な地域があるという事実は抹殺出来ないが...
戸坂潤 「思想としての文学」
...幾人東至又西還(幾人か東に至りまた西に還るや)潮満沙頭行路難(潮沙頭に満ちて行路難し)会得截流那一句(流れを截(た)つの那(か)の一句を会得(えとく)せば)何妨抹過海門関(何ぞ妨げん海門の関を抹過するを)と読まれるのもある...
中里介山 「大菩薩峠」
...齡(よはひ)も非凡の美しさを抹消し切らぬ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...季節と云ふ厭な聯想を抹殺するために朝子は掌にしてゐる雑巾で蟻を潰した...
原民喜 「針」
...大量に俘虜を抹殺するような最悪の事態が起きても...
久生十蘭 「ノア」
...明石夫人は一抹(いちまつ)の物足りなさを感じたに違いない...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...(注・以下四行抹消されている)しかも“大事にしてね”“なんでも相談するから”と仰言っていらっしゃったのに...
山崎富栄 「雨の玉川心中」
...今日は再度の電報で来られたと――(注・以下四行半抹消されている)こんな御返事...
山崎富栄 「雨の玉川心中」
...どことなく土地は一抹の羞しそうな処女の表情をしている...
横光利一 「欧洲紀行」
...一抹の憂鬱さを沁み込ませて来るのだった...
横光利一 「旅愁」
...街頭でちよつと抹茶を飮ませる家は...
吉川英治 「折々の記」
...孔明の身辺に一抹の凶雲がまつわって来つつある間に...
吉川英治 「三国志」
...――と、小次郎には、どうしても、疑いきれないで――しかしまた、一抹の不安も、拭いきれなかった...
吉川英治 「平の将門」
...人によれば自分の感じたことをわざと抹殺しようとする習慣をさえ持っている...
和辻哲郎 「創作の心理について」
...ここには流布本の源流云々という一行を抹殺した...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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