...日本に帰つて折しも顔見世の芝居を見...
阿部次郎 「帰来」
...折しも円らかなる月のさし出づるころで都にある夫を想いながら空の一角を仰いで月を見...
上村松園 「砧」
...「ああこれだな」と思った折しも...
海野十三 「暗号数字」
...折しも夕陽既に沈んで...
大町桂月 「夜の高尾山」
...ただ一基……折しも陽(ひ)雲にかくれて晩春の気蕭条(しょうじょう)! ここに数奇(すうき)の運命の人眠る...
橘外男 「墓が呼んでいる」
...折しもあれ――というほどのことでもないが――そこへ大殿堂(グラン・パレ)ET小殿堂(プチ・パレ)の方角から一台の遊覧用大型自動車(シャラパンク)が疾駆して来て...
谷譲次 「踊る地平線」
...折しも新落成の鐵道開業の祝ひとかにて...
内藤湖南 「寧樂」
...折しも余を去る事二間ばかりのところに退屈そうに立っていた巡査――自転車の巡査におけるそれなお刺身のツマにおけるがごときか...
夏目漱石 「自転車日記」
...一年二百五十日は降るといふ島の雨が折しも夕立となつて降り出した...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...チョッ今言ッてしまおう」ト思い決(さだ)めて今将(まさ)に口を開かんとする……折しも縁側にパタパタと跫音(あしおと)がして...
二葉亭四迷 「浮雲」
...折しも其処の裏門よりLet(レット)us(アス)go(ゴー)on(オン)(行こう)ト「日本の」と冠詞の付く英語を叫びながらピョッコリ飛出した者が有る...
二葉亭四迷 「浮雲」
...折しも湯島台から...
三上於兎吉 「艶容万年若衆」
...毒の味は甘い歓びの毒に溺(おぼ)れて溺れ死ぬのが、一ばん生き甲斐(がい)のある生き方と申してよろしい――」と、言う折しも、取次が呉羽之介の到着を知らせました...
三上於兎吉 「艶容万年若衆」
...折しも、通りすがった二人づれ――対(つい)の黄八丈(きはちじょう)を着て、黒繻子(くろじゅす)に緋(ひ)鹿(か)の子(こ)と麻の葉の帯、稽古(けいこ)帰りか、袱紗包(ふくさづつみ)を胸に抱くようにした娘たちが、朱骨の銀扇で、白い顔をかくすようにして行く、女形(おやま)を、立ち止って見送ると、「まあ、何という役者でしょう? 見たことのない人――」「ほんにねえ、大そう質直(じみ)でいて、引ッ立つ扮装(なり)をしているのね?誰(だれ)だろう?」と考えたが、「わかったわ!」「わかって?誰(だ)あれ?」「あれはね、屹度(きっと)、今度二丁目の市村座(いちむらざ)に掛(かか)るという、大坂下りの、中村菊之丞(きくのじょう)の一座(ところ)の若女形(わかおやま)、雪之丞(ゆきのじょう)というのに相違ないでしょう――雪之丞という人は、きまって、どこにか、雪に縁のある模様(もよう)を、つけているといいますから――」「ほんにねえ、寒牡丹を繍(ぬ)わせてあるわ」と、伸び上るようにして、「一たい、いつ初日なの?」「たしか、あさッて」「まあ、では、じき、また逢えるわねえ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...折しも盛夏であったので...
森於菟 「放心教授」
...折しも四方に雲が湧き...
夢野久作 「白髪小僧」
...東天漸(ようや)く紅(くれない)ならむとする折しもあれ...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...折しも、こんな大雷雨だ...
吉川英治 「私本太平記」
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