...」雑誌に被(かぶ)せた表紙の上へ、巻紙を添えて出す、かな交りの優しい書(て)で、――折しも月は、むら雲に、影うす暗きをさいわいと、傍(かたえ)に忍びてやりすごし、尚(なお)も人なき野中の細道、薄茅原(すすきかやはら)、押分け押分け、ここは何処(いずこ)と白妙(しろたえ)の、衣打つらん砧(きぬた)の声、幽(かすか)にきこえて、雁音(かりがね)も、遠く雲井に鳴交わし、風すこし打吹きたるに、月皎々(こうこう)と照りながら、むら雨さっと降りいづれば――水茎の墨の色が、はらはらとお嬢さんの睫毛(まつげ)を走った...
泉鏡花 「薄紅梅」
...急ぎ足にて案内知れる近道なる畑道をぞ来たりける折しも...
井上円了 「おばけの正体」
...折しも小春の空長閑(のどけ)く...
巌谷小波 「こがね丸」
...それをいぶかる折しも...
海野十三 「火星兵団」
...折しも夕日は對岸にのみ及びて...
大町桂月 「赤城山」
...」]折しもほの白い...
チェスタートン Chesterton 直木三十五訳 「サレーダイン公爵の罪業」
...折しも寶庫開扉にて眞僞は知らず...
内藤湖南 「寧樂」
...折しも騒擾の極に達した往来へ跳び出して行った...
西尾正 「放浪作家の冒険」
...今日ぞこの頃(ごろ)など思(おも)ひ出(いづ)る折しも...
樋口一葉 「あきあはせ」
...折しも妾の再び懐胎せるを幸い...
福田英子 「妾の半生涯」
...折しも紙襖(ふすま)一ツ隔ててお鍋の声として...
二葉亭四迷 「浮雲」
...『僕が百の頭をもった竜をこわがっているとでも思うのか!』こうして彼等が話をしている折しも...
ナサニエル・ホーソン Nathaniel Hawthorne 三宅幾三郎訳 「ワンダ・ブック――少年・少女のために――」
...折しも庵主の露月は...
三上於兎吉 「艶容万年若衆」
...折しも社前の大燈籠の奉納会とやら申しまして...
三上於兎吉 「艶容万年若衆」
...折しも四方に雲が湧き...
夢野久作 「白髪小僧」
...折しも、こんな大雷雨だ...
吉川英治 「私本太平記」
...折しも襄陽は凶年だったが...
吉川英治 「人間山水図巻」
...折しも、湖岸(きしべ)に此珍事を傍観(み)て居た人があつて、艪(ろ)で、其艪で殺しておしまひなさい、頭をなぐつてお遣(や)んなさい!母は大骨折つて、やつと、此大鱒を打殺し升た...
若松賎子 「鼻で鱒を釣つた話(実事)」
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