...恁る折しも三寶ヶ辻で...
泉鏡花 「遺稿」
...」雑誌に被(かぶ)せた表紙の上へ、巻紙を添えて出す、かな交りの優しい書(て)で、――折しも月は、むら雲に、影うす暗きをさいわいと、傍(かたえ)に忍びてやりすごし、尚(なお)も人なき野中の細道、薄茅原(すすきかやはら)、押分け押分け、ここは何処(いずこ)と白妙(しろたえ)の、衣打つらん砧(きぬた)の声、幽(かすか)にきこえて、雁音(かりがね)も、遠く雲井に鳴交わし、風すこし打吹きたるに、月皎々(こうこう)と照りながら、むら雨さっと降りいづれば――水茎の墨の色が、はらはらとお嬢さんの睫毛(まつげ)を走った...
泉鏡花 「薄紅梅」
...折しも秋の末なれば...
巌谷小波 「こがね丸」
...(ほう、ここは見覚えのあるタイム・マシーンの中だ!)と、気がつく折しも、この金属壁の一部がぽかりと四角にあいて――そこが扉だったのだ――外からこっちを覗きこんだ者がある...
海野十三 「海底都市」
...折しも幸運なことに深山の写した子爵夫人と潮との秘交(ひこう)の赤外線映画が手に入ったので...
海野十三 「赤外線男」
...折しも夕陽既に沈んで...
大町桂月 「夜の高尾山」
...折しもまだシャーロック・ホームズは朝食中だった...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「緋のエチュード」
...折しも新落成の鐵道開業の祝ひとかにて...
内藤湖南 「寧樂」
...折しも余を去る事二間ばかりのところに退屈そうに立っていた巡査――自転車の巡査におけるそれなお刺身のツマにおけるがごときか...
夏目漱石 「自転車日記」
...折しも騒擾の極に達した往来へ跳び出して行った...
西尾正 「放浪作家の冒険」
...折しもあれ夏草ところ得がほにひろごれば...
一葉 「暗夜」
...折しもくだんの有力者は自分の書斎で...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「外套」
...詮方(せんかた)なく帰宿せんとする折しも...
福田英子 「妾の半生涯」
...折しもこの度外国征伐の時世と巡り会い...
藤野古白 藤井英男訳 「戦争」
...折しも家の前を通りし大原家の下女何心なく中川家の座敷を覗(のぞ)き「オヤ満さんはここにいるよ...
村井弦斎 「食道楽」
...あたり見まはす折しもあれ最前の若衆...
夢野久作 「白くれない」
...折しもあれ一人の女性(にょしょう)あり...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...折しも盧の大旦那――綽名(あだな)玉麒麟(ぎょくきりん)が――番頭(ばんとう)丁稚(でっち)をさしずしてしきりに質(しち)流れの倉出し物と倉帳(くらちょう)との帳合(ちょうあい)をやっていたが...
吉川英治 「新・水滸伝」
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