...日中でも木の葉の戦ぐ音の聞えるくらゐであるのに...
永井荷風 「来訪者」
...涼しげに戦ぐ山田もあれば...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...岩根踏み誰かは訪はん楢の葉の戦ぐは鹿の渡るなりけり 女院哀れに思召して...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...八ツ手か何かが戦ぐ音がした...
宮本百合子 「或る日」
...秋草の戦ぐ夕焼空で夏の末らしい遠雷がしていた...
宮本百合子 「九月の或る日」
...彼方の崖の樹が戦ぐ...
宮本百合子 「木蔭の椽」
...お前の裡には慕しい我北国の田園も日に戦ぐユーカリの葉もある...
宮本百合子 「五月の空」
...この消長はまた一年の中にも見えて三四月の弧線は尤も低く十一、十二月は尤も高し(Americ. Journal of Psychol., I, 3.)これと趣を異にしたるものはニツツアーの人マカリオMacario が病人の夢の検究なり未だ閾を越えて識界に入らざる痛楚、不仁等も眠つて居る間休む調停作用のお蔭で夢に顕はれる即ち所謂病兆夢Prmonitorische Trume なり、――両足が石に成つた夢を見た跡から脊髄的の両下脚麻痺が起り、夢に犬に噬まれたと思つた所に跡で癰が呈はれ、右の腹に刀を刺された夢を度々見た跡で肝膿瘍が知れ、腹の上へ鷲鳥が下りた夢の跡で腸窒扶斯が発し、沈溺縊首の夢は屡々真の呼吸困難に先つ、また発狂前にも種々の夢を見る――其外既に発した病は症に随て夢を殊にす、鬱憂家の夢は悲むべく、躁狂家の夢は誇張し、痴狂家の夢は稀疎にして飄忽たり、依卜昆垤児(ひぽこんでる)の夢と喜斯的里(ひすてりー)の夢は多く自分の身を困め、心臓病者の夢は短くして醒(さめ)る時には瀕死の苦あり、小児の腹中に虫湧く時は睡眠中驚き醒むること多し、陰部の刺衝と老人の僂麻質斯(れうまちす)性睾丸炎の夢は猥褻にして洩精す、又萎黄病の処女は何時も心臓の噪響を聴く為め歟その見る夢は海の波の音、風の戦ぐ声、鶯のしばなく声などなり(Gaz. md. de Paris 1888 & 1889.)...
森鴎外 「夢」
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