...初めて蚊帳を釣らなくなつた晩に沁々と物懷しく秋になつたなと感じたあの心持――あの鮮かな...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...或者は何時となく革命的精神を失つて他の温和なる手段を考へるやうになり(心懷語の著者の如く)...
石川啄木 「A LETTER FROM PRISON」
...智惠子はそれに懷し氣な眼を遣り乍ら針の目を運んだ...
石川啄木 「鳥影」
...名も懷(なつか)しき梅津(うめづ)の里を過ぎ...
高山樗牛 「瀧口入道」
...彼は先んじて寒暖計や懷中時計を生活にとりいれた人だが...
徳永直 「光をかかぐる人々」
...その時彼は懷中に僅か六グロッシェンしか持ってはいなかった...
アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフ Annette von Droste=Hulshoff 番匠谷英一訳 「ユダヤ人のブナの木」
...大正十年に懷徳堂で...
内藤湖南 「大阪の町人學者富永仲基」
...彼(かれ)は彼(かれ)の懷(ふところ)に幾分(いくぶん)の餘裕(よゆう)を生(しやう)じて來(き)たことが凡(すべ)ての不滿(ふまん)を償(つぐな)うて猶(なほ)餘(あまり)あることであつた...
長塚節 「土」
...これや」ガラツ八は自分の懷(ふところ)見たいな顏をして...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...行つて見よう」平次は十手を懷中にねぢ込むと...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...――懷中(ふところ)の十手を取り出すわけにも行かないから...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...お紅ちやん」振り返る八五郎の懷ろへ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
......
一葉稿 「五月雨」
...我が祖母我が母の懷に眠りつつ幾度となく語られしものなれば...
水上瀧太郎 「貝殼追放」
...カルヴェンに休息の地を與へ、ヴォルテェルに避難所を供し、ルゥソォを送りいだし、スタァル夫人をはぐくみ育てたジュネヴは、今その懷に、この湖水の奧深くに、モントルゥの近くに、眞の平和の偉人ロマン・ロランを安らかに庇護してゐるではないか...
吉江喬松 「山岳美觀」
...このヤンの體躯へ兩腕をして、シルストルは子供のやうな態度で、懷かしさうに、彼を抱いた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...懷疑的な言辭を吐くやうにもなつた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...彼女の方へ懷かしさうに頭を曲げてゐた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
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