...併し自らを啓發するために常に準備してゐる魂でなければ――自らの中に未だ知らぬ者を求むる苦悶と憧憬とを持つてゐる魂でなければ...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...幸か不幸か知らぬが終に半生を文壇の寄客となって過ごしたのは当時の青春の憧憬に発途しておる...
内田魯庵 「四十年前」
...かのメントール侯こそ憧憬(あこがれ)の星であるらしく思われた...
海野十三 「暗号音盤事件」
...憧憬の悲哀と言つたものより他に...
田山録弥 「春雨にぬれた旅」
...一片の麩(ふ)を争う池の鯉の跳躍への憧憬がラグビー戦の観客を吸い寄せる原動力となるであろう...
寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
...中学時代の自分の頭には実際丸善というものに対する一種の憧憬(どうけい)のようなものが潜んでいたのである...
寺田寅彦 「丸善と三越」
...こんな風景と生活とに憧憬に近いものを抱いている...
外村繁 「澪標」
...青春期の漠然とした憧憬の気持の上に立った空想で出来上っているので...
豊島与志雄 「道連」
...そこには近代文明の不幸な疾病が憧憬する所の...
萩原朔太郎 「愛の詩集」
...人の心に一種の憧憬と郷愁を呼び起し...
萩原朔太郎 「月の詩情」
...兎角理想というものは遠方から眺めて憧憬(あこが)れていると...
二葉亭四迷 「平凡」
...しかも、死にたい衝動、憧憬、或いは、死ななければならなかった理由が何んなに強かったか――その証拠に、カミィル巡査は坐る時のようにきちんと膝を折り曲げ、タオルで足首を腿へ縛りつけて、足が床へ届かないように細心の注意を払って吊り下がっているのだ...
牧逸馬 「ロウモン街の自殺ホテル」
...二十(はたち)未滿の女が小説で知つてゐる東京に憬(あこが)れて...
正宗白鳥 「入江のほとり」
...われらが憧憬の国は...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「餓えた人々(習作)」
...そこには憧憬があり...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...此二十四歳の女の心は知らない憧憬に満ち...
宮本百合子 「五月の空」
...僕の憧憬(あこがれ)の国といってもいい位なんです...
夢野久作 「狂人は笑う」
...六朝芸術に現われた憧憬の心持ちは...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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