...荒磯(あらいそ)に波また波が千変万化して追いかぶさって来ては激しく打ちくだけて、まっ白な飛沫(ひまつ)を空高く突き上げるように、これといって取り留めのない執着や、憤りや、悲しみや、恨みやが蛛手(くもで)によれ合って、それが自分の周囲の人たちと結び付いて、わけもなく葉子の心をかきむしっていたのに、その夕方の不思議な経験のあとでは、一筋の透明なさびしさだけが秋の水のように果てしもなく流れているばかりだった...
有島武郎 「或る女」
...正造の身内に憤りがみなぎってきた...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...武男が憤りの底にはちとの道理なかりしか...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...」何を言うか、と青木は思ったが、その憤りのため、却って後へは引けなくなった...
豊島与志雄 「擬体」
...私は或る憤りを感じて不機嫌になったのである...
豊島与志雄 「死ね!」
...思想に満ち満ちていて、創造的幻想の表面上の混乱さに従って、多少拙劣にその思想を使用してる者にたいし、自分では思想をもっていないが、学び知った形式に従ってたやすく思想を表現する者がいだく、自然の憤りを、多くの者はクリストフにたいしていだいていた...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...憤り且つ歎きました...
豊島与志雄 「立札」
...それでも彼の憤りは止まなかった...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...だが、牧のことを考える時のように、憤りが、口惜しさが、湧き立って来なかった...
直木三十五 「南国太平記」
...そして、下級の士は、磯浜の堤の中に、沈黙している、その反射炉から生れてきた大砲を、撫でながら、或る者は、泣き、或る者は憤り、或る者は、叫んでいた...
直木三十五 「南国太平記」
...深く憤りはしたものの...
永井荷風 「つゆのあとさき」
...怨みと憤りに燃える顔は歪(ゆが)んで...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...大尉の息子は赫つとなつて憤りに燃えた...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...こんなことを思った時から大将はあまりなお扱いに憤りに似た気持ちが起こって...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...さるに數奇失意の人は造化を怨み、自然を憤りて、此世を穢土(ゑど)と罵(のゝし)り、苦界と誚(そし)るなり...
森鴎外 「柵草紙の山房論文」
...しばしば憤りに堪えなかった...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...私は亡びてゆく国の苦痛についてここに新しく語る必要はないであろう)必ずや日本の凡ての者はこの無謀な所置に憤りを感じるにちがいない...
柳宗悦 「民藝四十年」
...筆者が最も憤りを覚えたのは...
山下博章 「「プラーゲ旋風」の話」
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