...三日月のような愁いの眉をひそめてとか...
上村松園 「眉の記」
...誰もみな正造の生還は覚束ないと思いこんでいる愁い顔だった...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...爾(カレ)その母に、愁い申す時に、御祖(ミオヤ)の答えて曰く、我が御世の事、能くこそ神習(カミナラ)はめ、又うつしき青人草習えや、其物を償わぬ、と云いて其兄なる子を恨みて、乃ち其伊豆志(イツシ)河の河島の節竹(ヨダケ)を取りて、八目之荒寵(ヤツメノアラコ)を作り、其河石を取り、塩に合えて、その竹の葉に裏(ツツ)み、(トコ)い言わしめけらく、此竹葉(タカバ)の青むがごと、此竹葉の萎むがごと、青み萎め...
高木敏雄 「比較神話学」
...学校から解放せられて自由な天地へ出た歓びと一種の愁い...
豊島与志雄 「或る女の手記」
...私の心のこの愁いは何故であろうか...
豊島与志雄 「画舫」
...船中の一同は心のなかにさまざまな愁いを抱き...
久生十蘭 「重吉漂流紀聞」
...なんともつかぬ愁いに沈んだ...
久生十蘭 「ノア」
...向(むこう)は鯛のあらい、汁は鯉こく、椀盛は若鶏と蓮根、焼物は藻魚(もうお)の空揚げ、八寸はあまご、箸洗いという献立で、青紫蘇の葉を敷いた鯛のあらいも、藻魚の附合せの紅葉おろしも、みな佗のある美しさだったが、安と向きあって食事をしている杜松の顔のなかにも、なにかそれと通じあうものがあるようで、滋子は、愁いに似た、やるせないほどの愛情で胸をつまらせた...
久生十蘭 「野萩」
...あんな愁いのきいた...
久生十蘭 「ユモレスク」
...石田家の愁いの種になっている...
久生十蘭 「我が家の楽園」
...もし今年雨がよく降らなければ、と皆愁い顔です、苗代は枯れませんが、これでダーと降ったらすぐぬかないと根がくさるのですって...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...女形のみんしは愁い顔だが上品で...
山本笑月 「明治世相百話」
...彼の表情のどこ一点にも愁いの影はなかった...
横光利一 「微笑」
...――昼顔の伸び悪い垣の愁い...
横光利一 「夜の靴」
...過ぎた日のことを思い出す愁いは旅にはつき物とはいえ...
横光利一 「旅愁」
...中田の呟きには美しい感覚の愁いが籠っていた...
横光利一 「旅愁」
...拡がりすぎてゆく漣に似た速さでかき消えた愁いがあった...
横光利一 「旅愁」
...急に千鶴子だけひとり愁いを顔に表わして矢代をじっと見詰めていた...
横光利一 「旅愁」
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