...爾(カレ)その母に、愁い申す時に、御祖(ミオヤ)の答えて曰く、我が御世の事、能くこそ神習(カミナラ)はめ、又うつしき青人草習えや、其物を償わぬ、と云いて其兄なる子を恨みて、乃ち其伊豆志(イツシ)河の河島の節竹(ヨダケ)を取りて、八目之荒寵(ヤツメノアラコ)を作り、其河石を取り、塩に合えて、その竹の葉に裏(ツツ)み、(トコ)い言わしめけらく、此竹葉(タカバ)の青むがごと、此竹葉の萎むがごと、青み萎め...
高木敏雄 「比較神話学」
...十七……愁いにしずむ私の胸にくるしい思いがむらがっている...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「決闘」
...哀愁いよ/\深し...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...魚の骨の骨弓をひいて奉る一筆魚の骨の骨還(また)かえってくる情愛愁(しゅう)と云う字 その字天下の人々が口にする腸(はらわた)のなかにある愁いの海に沈む舟よ...
林芙美子 「新版 放浪記」
...彼女の様子は半ば陽気で半ば愁いを帯びていた...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...あんな愁いのきいた...
久生十蘭 「ユモレスク」
...愁いに似たやるせないほどの愛情で胸をつまらせた...
久生十蘭 「ユモレスク」
...もし今年雨がよく降らなければ、と皆愁い顔です、苗代は枯れませんが、これでダーと降ったらすぐぬかないと根がくさるのですって...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...生絹はその愁いに驚いて眼をとどめた...
室生犀星 「荻吹く歌」
...こういうあいだに筒井の愁いは少しずつ剥がれるときもあるにはあったが...
室生犀星 「津の国人」
...悠々たる態度の裡に無限の愁いを含ませ...
夢野久作 「鼻の表現」
...彼の表情のどこ一点にも愁いの影はなかった...
横光利一 「微笑」
...――昼顔の伸び悪い垣の愁い...
横光利一 「夜の靴」
...鴎のゆるく飛び交う水面を拡がる水脈のような甘美な愁いがいっぱいに流れわたった...
横光利一 「旅愁」
...中田の呟きには美しい感覚の愁いが籠っていた...
横光利一 「旅愁」
...身のひき緊る愁いでもあったろう...
横光利一 「旅愁」
...漂う人の旅の愁いの増すばかりが若者の時代となって来たのである...
横光利一 「旅愁」
...急に千鶴子だけひとり愁いを顔に表わして矢代をじっと見詰めていた...
横光利一 「旅愁」
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