...愁に沈む女よ、落葉松(からまつ)よ、わたしの悲しい心の悦(よろこび)...
上田敏 上田敏訳 「牧羊神」
...月の光は宵々ごとにその憂愁と冷徹さを深め...
薄田泣菫 「木犀の香」
...言葉にいえない幽愁を催(もよお)させる...
永井荷風 「すみだ川」
...然し彼の意識しない愛惜と不安とが対手に愁訴するように其声を顫わせた...
長塚節 「太十と其犬」
...何か淡い哀愁を誘はれる好ましい仕草にも思はれたのだつた...
中戸川吉二 「イボタの虫」
...広重の版画と同じ郷愁を見る人の胸にしみ通らせてくれる...
野村胡堂 「胡堂百話」
...情緒よながい憂鬱のながれを視てゐるとあまりに私の眺望もさびしくなるこの日もすでにくれがた人生の影ながき厭生哲學の書物をひらけばああはや いみじくも芽ぐみきたる感情の昂進よさばかり情愁のみどりをふくめばさびしき思想の倉庫をひらき重たき黒の冥想の頭巾をとりて歩まんいざや歩み行かな...
萩原朔太郎 「我れ何所へ行かん」
...言うのも愁(つら)かったが...
長谷川時雨 「マダム貞奴」
...不安哀愁落膽等は避け難き歸結である...
波多野精一 「時と永遠」
...旅愁なんかと云うなまやさしいものではなかった...
林芙美子 「新版 放浪記」
...燒野原の夜空に哀愁をこめて...
林芙美子 「なぐさめ」
...悲愁なりし私の落語家時代の消息を熟知してゐて...
正岡容 「滝野川貧寒」
...愁わしげな優しさで...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「小フリイデマン氏」
...孤往愁可知...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...それは一種の憂愁を帯びてゐるところに存する...
コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳 「樺太脱獄記」
...そのとき父の顔にあらわれた憂愁の色は忘れがたいものだった...
山本周五郎 「日本婦道記」
...君ぬらさじと堰(せ)きとむるしがらみの句切(くぎり)の淀(よど)に青き愁(うれひ)の水渋(みしぶ)いざよふ...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集」
...私は今からもう春愁に耐へ難い氣がしてならない...
吉川英治 「折々の記」
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