...心では、相変らず、人間の自信と暴力とを怪しみ、恐れ、悩みながら、うわべだけは、少しずつ、他人と真顔の挨拶、いや、ちがう、自分はやはり敗北のお道化の苦しい笑いを伴わずには、挨拶できないたちなのですが、とにかく、無我夢中のへどもどの挨拶でも、どうやら出来るくらいの「伎倆(ぎりょう)」を、れいの運動で走り廻ったおかげ? または、女の? または、酒? けれども、おもに金銭の不自由のおかげで修得しかけていたのです...
太宰治 「人間失格」
...煩悩の苦しみとやらに充ちて居る浮世と云うものがどんな忌まわしい国土であるか...
谷崎潤一郎 「二人の稚児」
...加世子も毎晩このラジオには悩まされるらしく...
徳田秋声 「縮図」
...遙かに教育の名に於て苦悩していることだろう...
戸坂潤 「社会時評」
...森と野と水との沈黙によって多年の間鍛え上げられた蘇武の厳(きび)しさの前には己の行為に対する唯一の弁明であった今までのわが苦悩のごときは一溜(ひとたま)りもなく圧倒されるのを感じないわけにいかない...
中島敦 「李陵」
...――その若い人達を悩ました問題というのは...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...頭の芯がくたびれるほど悩まされたが...
久生十蘭 「あなたも私も」
...わたしはクレオパトラを演じまして全校を悩殺したことがあるんだから...
久生十蘭 「犂氏の友情」
...深いところで自信のなさの劣等感に悩んでいるかよわい一本の含羞草(ミモザ)にすぎない〉ので...
久生十蘭 「だいこん」
...オロシャ人の侵略に悩まされているカラフトの同胞人を...
本庄陸男 「石狩川」
...何らの悩しさも現れてゐない...
牧野信一 「夏ちかきころ」
...悩ましいそして憂鬱(ゆううつ)な調子で求めたのである...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...教育の問題を悩みぬき...
村山俊太郎 「石をしょわずに」
...蘭軒は今僅に二十三歳にして既に幾分か其痼疾に悩まされてゐたのである...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...あの線条の研究に随分わたしは頭を悩まして...
横光利一 「馬車」
...」印度洋の中ごろで夜毎に若者たちを悩ました沖の青春時代の思い出談の落ちが...
横光利一 「旅愁」
...わしは、わしを責めて、怖ろしさと苦しみと、二重の悩みに、輾転(てんてん)と悶(もだ)えた...
吉川英治 「茶漬三略」
...「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」の思想のうちに生活と理想との或る調和を造り出していた日本の仏教へ...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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