...――しかも僕はルノアルに恋々(れんれん)の情を持つてゐるやうに文芸上の作品にも優美なものを愛してゐる...
芥川龍之介 「文芸的な、余りに文芸的な」
...「いやしくも男子たるものがそう妻子に恋々としていられるか」というだろう...
伊藤左千夫 「去年」
...我輩は米人の平和に恋々たるを徳とし...
大隈重信 「文明史上の一新紀元」
...彼は折々山の上から西坂本の空を眺めて恋々(れん/\)としたこともあり...
谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」
...祖母(ばば)は眼鏡エかけ長(なげ)エ鼻をヨ弥撒集(いのりぼん)に突ツ込み、鉛の箍((たが))のビールの壺はヨ大きなパイプで威張りくさつて突ン出た唇(くち)から煙を吐き吐き、しよつちう吐エてる奴等の前でヨ、泡を吹いてら、突ン出た唇奴(くちめ)等もつともつとと、ハムに食ひ付き、火は手摺((てすり))附の寝台や長持なんぞを照らし出してヨ、丸々太つてピカピカしてゐる尻を持つてる腕白小僧は膝ついて、茶碗の中に突つ込みやがらアその生(なま)ツ白(ちれ)エしやツ面(つら)をその面(つら)を、小(ちひ)せエ声してブツクサ呟くも一人の小憎の鼻で撫でられその小僧奴の丸(まアる)い面(つら)に接唇とくらア、椅子の端ツこに黒くて赤(あけ)エ恐ろし頭した婆々(ばばあ)はゐてサ、燠((おき))の前でヨ糸紡ぐ――なんといろいろ見れるぢやねエかヨ、この荒家(あばらや)の中ときた日にヤ、焚火が明(あか)アく、うすみつともねエ窓の硝子を照らす時!紫丁香花(むらさきはしどい)咲いてる中のこざつぱりした住居ぢや住居中ぢや騒ぎぢや愉快な騒ぎ……来なよ、来なつてば、愛してやらあ、わるかあるめエ来なツたら来なよ、来せエしたらだ……彼女曰く――だつて職業(しごと)はどうなンの?〔一五、八、一八七〇〕音楽堂にてシャルルル・ガアルの広場貧弱な芝地になつてる広場の上に、木も花も、何もかもこぢんまりした辻公園に、暑さにうだつた市民たち、毎木曜日の夕べになると、恋々と、愚鈍を提げて集つて来る...
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー Jean Nicolas Arthur Rimbaud 中原中也訳 「ランボオ詩集」
...どんなに理想的な美しい交はりが出来るだらう――恋々の情を筆にこめて切りに手紙を書く...
牧野信一 「坂道の孤独参昧」
...年寄たちへの哀慕の念と共に恋々と追想させないわけには行かなかつた...
正岡容 「異版 浅草燈籠」
...彼の様子に殆ど「恋々」という形容詞があてはまりそうな何ものかが在るのに驚いた...
宮本百合子 「伊太利亜の古陶」
...なお恋々(れんれん)...
吉川英治 「上杉謙信」
...よもやなお恋々と...
吉川英治 「大岡越前」
...恋々たる未練がありそうですから...
吉川英治 「三国志」
...小児の病気ぐらいに恋々として...
吉川英治 「三国志」
...恋々(れんれん)たる離別は龍顔(りゅうがん)をかきくもらせてはいたが...
吉川英治 「私本太平記」
...獄裡(ごくり)の夢にも夜々恋々(よよれんれん)と消し難いものがおありなのにちがいない……と...
吉川英治 「私本太平記」
...旧態の将軍家をなお恋々と奉じている...
吉川英治 「新書太閤記」
...恋々(れんれん)と泣き濡れているだけが愛情でもない...
吉川英治 「新・水滸伝」
...スガ目の忠盛にあきたらぬこと年久しく――しかもなお虚栄に富んで女の晩春に恋々(れんれん)たる彼の母は...
吉川英治 「随筆 新平家」
...去りがてに恋々としている眼でもない...
吉川英治 「源頼朝」
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