...それは勿論覚悟の前です……お察し下さい、これはほとんど私が生命を忘れ、世間を忘れ、甚しきは一人(にん)の親をも忘れるまで、寝食を廃しまして、熟慮反省を重ねた上の決意なのです...
泉鏡花 「唄立山心中一曲」
...分銅のようないわゆるダ(漢字を忘れた)という奴を引きずって歩かせる...
大杉栄 「続獄中記」
...輜重の任をも打忘れて...
大町桂月 「川魚料理」
...住の江の忘れ草が何であるかといふことは...
薄田泣菫 「茶話」
...ついそれを衣裳のポケットに突つ込んだまゝ忘れるなどといふことはざらにあるといつてもいゝだらう...
高田保 「恋文」
...同時にあなたを識(し)る程の者の母君となられるのである事をお忘(わす)れなすってはなりません...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...この使命をどう果すかを決定するのを忘れた論理は...
戸坂潤 「イデオロギーの論理学」
...すっかり忘れ去ってしまっていたことに...
中里介山 「大菩薩峠」
...いつの間にかけろりと忘れてしまっていた...
中谷宇吉郎 「寺田先生の追憶」
...月夜よし海鳥の像の傍らのテラスに合はす杯の音巴里のことは今ではすつかり忘却の霧の中に這入つてしまつたのでどこに海鳥の像があつたか思ひ出せない...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...妾(しょう)強(あなが)ちにこれを忘れんことを願わず...
福田英子 「妾の半生涯」
...村人は夜の更(ふ)けるのも忘れた...
牧野信一 「鬼涙村」
...馴(な)れない人は塩を入れる事を忘れて水っぽいものを拵えて味が悪いと言いますけれども塩加減が好ければ大層結構なものです」大原「それが第一日ですか...
村井弦斎 「食道楽」
...彼はどんなことも忘れて聴き惚れる癖があったが...
横光利一 「旅愁」
...「昨夜は深々と何もかも忘れて眠った...
吉川英治 「私本太平記」
...これらの物で露命をつないでいた日のことを我れ人ともにもう忘れかけている...
吉川英治 「私本太平記」
...そちの天分をふと見つけたから、忘れぬうちに、そちに将来の行(ゆ)く途(みち)を与えてやろうと考えたのだ...
吉川英治 「新書太閤記」
...晝の辨當を註文する前に一本のそれを用意する事を忘れない...
若山牧水 「樹木とその葉」
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