...仔細を問えど女は袖を顔にあてて忍び音に泣くばかりなり...
饗庭篁村 「良夜」
...」わッとまた忍び音(ね)に...
泉鏡花 「悪獣篇」
...……ぶるぶる震うと、夫人はふいと衾(ふすま)を出て、胸を圧(おさ)えて、熟(じっ)と見据えた目に、閨の内を(みまわ)して、(ぼう)としたようで、まだ覚めやらぬ夢に、菫咲く春の野を(さまよ)うごとく、裳(もすそ)も畳に漾(ただよ)ったが、ややあって、はじめてその怪い扱帯(しごき)の我を纏(まと)えるに心着いたか、あ、と忍び音に、魘(うな)された、目の美しい蝶の顔は、俯向けに菫の中へ落ちた...
泉鏡花 「婦系図」
...日ぞ忍び音に時雨れつる深草小野の柿の上枝(ほづえ)に熟(う)みのこる美(うま)し木醂(きざはし)...
薄田泣菫 「泣菫詩抄」
...藤は忍び音に泣いてゐるのである...
薄田泣菫 「森の声」
...忍び音にむせび泣く...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「かもめ」
...忍び音にギターを弾く...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「ワーニャ伯父さん」
...忍び音に弾いている...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「ワーニャ伯父さん」
...急に忍び音に泣き出した...
豊島与志雄 「蘇生」
...われは悔恨のひと屋の中に唯ひとり忍び音の外に漏れんことをおそる...
永井壮吉 「偏奇館吟草」
...忍び音に泣いているのでありました...
中里介山 「大菩薩峠」
...お銀様は忍び音に泣き伏しながら辛(かろ)うじて答えました...
中里介山 「大菩薩峠」
...この邸から忍び音の三味の調べをさえ聞こうとは思いがけぬことであります...
中里介山 「大菩薩峠」
...むしろ忍び音といった低い調子でしたけれども...
中里介山 「大菩薩峠」
...泣くにも人目を恥れば二階座敷の床の間に身を投ふして忍び音の憂き涕...
樋口一葉 「にごりえ」
...垣(かき)の隙(ひま)があらいとて忍び音(ね)を漏らす訳は少しも無之...
正岡子規 「人々に答ふ」
...忍び音にさめざめと泣くことで終るのが常であった...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ルイスヒェン」
...またその雨の中に折々忍び音に啼いてゐる小鳥を聽いてゐると...
若山牧水 「樹木とその葉」
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