...画院の待詔で、遊魚の図の名手として聞え、世間から范獺子と呼ばれた范安仁をはじめ、応挙、盧雪、崋山などの名高い作物をも見たが、その多くは愉快な魚の動作姿態と、凝滞のない水の生活の自由さとを描いたもので、あの古池の鯉が見せてくれたやうな、淡水に棲む老魚の持つ倦怠と、憂鬱と、暗い不気味さとは、どの作品でも味はふことができなかつたのを、幾らか物足らず思つたものだ...
薄田泣菫 「魚の憂鬱」
...画院の待詔で、游魚の図の名手として聞え、世間から范獺子と呼ばれた范安仁をはじめ、応挙、蘆雪、崋山などの名高い作物をも見たが、その多くは軽快な魚の動作姿態と、凝滞のない水の生活の自由さとを描いたもので、あの古池の鯉が見せてくれたような、淡水に棲む老魚の持つ倦怠と、憂鬱と、暗い不気味さとは、どの作品でも味うことができなかったのを、幾らか物足らず思ったものだ...
薄田泣菫 「艸木虫魚」
...待詔金帯(たいしょうきんたい)を賜わってのう』老人の眸(ひとみ)は回顧をなつかしんでいた...
吉川英治 「人間山水図巻」
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